アイソトープ使用上の留意点

放射線取扱主任者 上西 邦夫

 アイソトープ、すなわち放射性同位元素は、目に見えない放射線を出し、しかもその放射線は物質を透過するので、その使用に当たっては、化学物質などとは違った特別の注意を要する。 それに加えてアイソトープは、その種類、形状によって性質が異なるので、使用の際には、それぞれ異なった取扱法をとらねばならない。
 そこで、個々のアイソトープを取り扱う際の具体的な指示はその使用責任者の方々にお願いするとして、ここではアイソトープを使う際に留意すべきいくつかの一般的な注意事項について述べることにする。

アイソトープの使用はルールに従って行われる。
「ルールを守ることが安全の出発点である。」

アイソトープを使用する時は、まずルールを守ること。
 ここで言う「ルール」とは、放射線障害防止法、関係省庁の出す省令、各大学の放射線障害予防規程といった公(おおやけ)のもの、共通のものである。 自分のやる実験だから、自分で購入したアイソトープだからといって自己流にやってはいけない。
「事故さえ起こさなければルールを破っても構わない」という考えは禁物である。
 アイソトープの事故は、いったん起きるとその影響は重大である。 事故はルールを守ってこそ防げるのであって、「ルールを守らなくても、事故さえなければそれでいい。」などと考えていると事故を誘発することになりかねない。

トラブルが発生したらすぐ届けること。
「隠したり放置したりすると重大な事態になりかねない。」

隠してはならないのは当然だが、放置することも良くない。
 トラブルがあったことを自分は知っているのだから、自分だけ気をつけていればいい・・・・・・・・・などと考えて放置しておくと、さらに重大なトラブルを生じかねない。
 たとえば、非密封アイソトープによる汚染が発生した場合、「あとで始末する。」などと言って放置しておくと、誰かが知らずに触って、汚染をさらに拡大してしまう・・・・・・といった事になる危険性がある。
ここで言うトラブルとは「事故」ではなく、もっと広い意味での「異常」と解釈すべきである。
 たとえば、アイソトープを使っていないはずの場所で放射線が検出されたら、たとえわずかな数値であったとしてもそれはやはり異常事態、トラブルといえる。
 アイソトープに直接つながらないようなトラブルにも注意すること。
たとえば、換気装置が停止したら、実験・作業に直接は影響しなくても、室内の空気中のアイソトープの量が増大し、実験者・使用者に影響を与える。

アイソトープの安全管理上、一番重要なのは使用者である。
「そのアイソトープについて最も知っている者(使用者)が最も安全に管理できる。」

 個々のアイソトープの特徴を最もよく知っているのは、それを使っている使用者である。さらに、使用現場(実験室)において、どの場所に何があるか、どの器具を使ったか等を知っているのは使用者だけである。従ってそのアイソトープを最も安全に取り扱うことが出来るのは使用者自身に他ならない・・・・・・ということを忘れぬ事。

−追加事項−

サーベイメーターのキャップについて
 アイソトープが出す放射線の種類は、核種によって異なる。
たとえば
    131I ・・・・・・ β線、γ線
     32P ・・・・・・ β線のみ
といった具合である。
 ところが、β線は透過力が弱く、金属などを通り抜けることは難しいので、32Pをサーベイメーターで検出しようとしても、管の先端にキャップを付けておくと検出できない。従って、相手が32Pの用にβ線しか出さぬような場合は、キャップを外して使用すべきである。
<ただし、サーベイメーターの管の先端の保護のため、キャップはなるべく付けておくことが望ましい。>

廃棄物にも注意すること
 非密封アイソトープを使用する実験では、アイソトープを含んだ廃棄物が出る。言うまでもなく、これらの廃棄物は、(名が「試料」から「廃棄物」へ変わったというだけで)依然として放射線を出し続けているのである。使用済みだからといって軽々しく扱って事故を起こしたりせぬように注意すべきである。

ご意見、お問い合わせは、osada@cc.miyazaki-u.ac.jpまでお寄せください.


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