食品成分による脂肪細胞機能の制御
日本では男性は3割、女性は2割の人が肥満であるとされています。その主な原因としては、食の欧米化による高カロリー食の摂取量の増加と交通手段の発達による運動不足であると考えられています。肥満は、インスリン抵抗性による2型糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病に直結し、最悪の場合、脳卒中や心筋梗塞を患い、命の危険に関わるようになります。
脂肪細胞は、前駆脂肪細胞が分化してできます。脂肪細胞は、食品の摂取や体内で合成された脂肪を蓄えていきます。しかし、代謝に使われない余剰のエネルギーは脂肪として脂肪細胞に蓄積されます。このように余剰の脂肪を蓄積していくと、脂肪細胞は異常なまでに大きくなった肥大化脂肪細胞になります。肥大化脂肪細胞の状態になると、長期間の緩い炎症状態である慢性炎症やインスリン抵抗性を引き起こすようになります。また、細胞同士が密集するため、低酸素領域ができるため、がん細胞と同様に血管新生が起こるとされています。
脂肪細胞からは、「アディポカイン」と呼ばれる生理活性タンパク質を分泌します。通常の脂肪細胞からは、インスリン感受性を促進するアディポカインや食欲を抑制するレプチンなど良い働きをするタンパク質が分泌されます。しかし、肥大化脂肪細胞からは、炎症を引き起こしたり、インスリン抵抗性を引き起こすとされるTNF-αなどの悪い働きをするタンパク質が分泌されます。このように、脂肪細胞は、肥大化の有無で生体内の働きが大きく変化します。
細胞の外は、細胞外マトリックスと呼ばれる細胞間物質で埋め尽くされています。細胞はその中に浮いてるような感じで存在し、ある程度自由に動くことが出来ます。細胞が炎症などで損傷を受けてると、細胞間を埋めようと細胞外マトリックスの一種であるコラーゲンを分泌します。通常状態では、その後、細胞増殖による修復によって、損傷前の状態に戻ります。しかし、慢性炎症などの長期間の損傷を受けると、細胞の修復が追い付かず、損傷状態が続きます。損傷状態が続くにつれて、コラーゲンの蓄積を増えていきます。そして、最終的にコラーゲンが過度に蓄積されて、細胞間が硬くなっていきます。そうなると、細胞が自由を失い、正常な機能を果たせなくなります。
当研究室では、ブルーベリー葉抽出物(BLEx)、α-リポ酸を用いた脂肪細胞の機能制御に関する研究と、脂肪細胞の機能制御が可能な食品成分の探索を行っています。
Copyright (C) 2007- Nishiyama & Yamasaki Laboratory. All Rights Reserved.