学術論文の書き方   (研究グループ内での約束事)

卒業論文、修士論文、博士論文も含みます。

T 一般的な注意事項  
U 修士論文などの添削(英語原稿も含む)のやり方  
V 論文に使う図の書き方:カレイダグラフ作製上の様式  
W 英語で論文を書くときの注意  
X PPT(S)に関する参考書(英文)  

機会を見つけて修正していきます。学生諸君は折に触れ読んで下さい。

T 一般的な注意事項

 修士論文などの様式はそれぞれ専攻や学科のルールに従って下さい。以下の事項はその上での注意事項です。
きちんと出来る人には屋上屋を重ねることになりますが、守って頂かないと添削やコメントはできません。

1 修士(卒業)論文の概要は、通常二段組になっていると思います。しかし段組のままでは添削(校正)が非常に難しく混乱します。また、図やキャプションの位置まで教員側が気を配りつつ添削するのは無意味です。そこで、添削用の段組していない「べた書きファイル」と「様式に合わせて段組したファイル」の両方(二種類或いは同じファイルに入れても良い)を送って下さい。教員側は前者のべた書きファイルのみに手を入れて返送するようにします。なお、一括修正が出来ないように(学生の皆さんがきちんと修正箇所を認識できるように)原則としてpdfファイルで返還します。指摘事項の修正漏れがないかどうか再確認して下さい。
2 論文は読む人にわかるように書くものです。執筆者本人は内容を熟知しているためにその意志がなくても自然に説明を省略したり、あるいは簡略化していることが頻繁に見られます。従って、読者(査読者を含む)はほとんどが基礎知識しかないことに留意して可能な限り詳しく説明をすることが必要です。特に自ら提案した仮説や仮定の説明は念入りにお願いします。それが結論に大きく影響します。読者がモデルを理解できないと論文として成立しません。
3 皆さんが論文を書いている途中でも、他の学生と教員とのメールのやり取りは必ず読んで、そこにある色々なコメントを十分に参考にして下さい。君たち自身も他の学生へのコメントを見て自分の原稿ならそのコメントがどの様に活かせるかを必ず考えて下さい。指導する方として別の学生にまた同じ様なコメントを重複して付けなければならない事態は避けて下さい
   これだけ言っても毎年、我々は同じようなコメントをそれぞれの学生に付けなければならない大変な作業をしています。君たちが少し気をつければ大幅に削減できるものです。M1の諸君も同じ事が言えます。
4 修士論文概要には謝辞の所に実際に指導を受けた先生の名前を入れて下さい。概要では特に主指導教員の名前のみが記載され、実質的に指導した者が見えませんので。
5 PLPPTSPVの実験方法で君がどの様に工夫して実験を行ったのかたのか記述してください。特にSPVでは相当色々なことをやって信号を出しているでしょう?電極を挟んだり、空気層を入れたり、試行錯誤があったと思います。これも研究のうちですから、この辺りもしっかり記述して残しましょう。実験手法を数行で書いてしまうような簡単な実験で研究を行ったのではないと思います。実験ノートに色々工夫したことを書いているはずですので、その中で後輩に伝えたいことを熱意を持って記載しましょう。。
6 PPTの原理図(bendingの話など)や、御子柴モデルを乗せる場合、何故この論文で掲載し説明しなければならないか考えて下さい。ページ数を増やすためにだけのペーストならやめて下さい。特に内容を理解していないとき。論文も読んでいないのに引用している人はいないはずですが...。
7 同じようなことですが、今更PASの昔の話やPPTSPZT bendingの説明を理論にする必要がありますか(4年生諸君も注意)。文献を挙げれば十分ですし、書きたければ実験手法の中で君の文章で測定原理として書けばよいと思います。
8 議論では図面を出したらそのコメントや議論を一つのパラグラフ以上で展開し記載する。1枚の図面に対して5行程度以上が目安です。そのなかで数ページ以上にわたる議論が展開できる図面が、学術論文として記載できる図面と言うことになります。図面ばかり多く議論が少ない論文は実験結果の羅列のみになり、著者の議論(考察)できる能力がないものと判断されます。また、図の説明(最低限の情報)はきちんとCaptionに書いて下さい。
9 理論については、参考文献を上げれば済むところは数行でまとめる事。どの論文にも書いてあるモデルや計算式をだらだら長く記載する必要はありません。

 

U 修士論文などの作り方と添削の方法(英語原稿も含む)

 修士論文を添削していて気がついた事を記述します。論文を書くにあたって、以下の件を留意して下さい。
 なお、英語で論文を書く機会はなかなかありません。その意味で「原則として修士論文は英語」とします。


1 修士論文などの添削を希望するときは、原稿の電子ファイルをPPTに関わる先生方へ送って下さい。添削する順番はこちらで調整します。
2 電子ファイルには図面(実験結果のみ:KaleidaGgraphの図)をリンクさせて下さい。考察するときに一部を拡大するなど作業が必要な場合があります。但し、ファイルサイズが重くなりすぎますので写真や装置図などは画質を落として結構です(特に写真は特徴が出る程度で良い)。また、一番重いと予想されるXRDの図についてはリンクを切って下さい。

3

先輩の修士論文などを引用する場合は、その部分を青文字で記載し、パラグラフの最後に氏名と年度など引用元を(..)付きで記載する。最終的には黒字に戻すことなりますが、添削段階では青のままにします。当然、「丸写しをしない」が原則です。
4 文章を作るときは JAPPRの論文にある英語表現を参考にして下さい。但し、センテンス一つ(二段組の場合で2行程度?)以上引用する場合は上と同じで青文字とし、引用元を明確に記載にして下さい。著作権侵害にならないように十分注意して対応すること。内容を引用した場合は参考論文からとして掲載する事になります。
5 「出来るだけ君たち自身で書いた原稿を添削する」のが教育だと考えています。従って修士論文等の添削も、「可能な限り君たちが書いた表現を活かす」方針です。その結果、いわゆる流暢な日本語ではない場合も多々あります。君たちの文章が跡形もなく消えてしなうようなことは出来るだけ避けるつもりです。
6 原稿にページ番号は必ず付けて下さい。何ページの何処をどうと言った議論が出来ません。かなりの人が忘れています。なお、概要には必要ありません。
7 実験方法で自分が行ったことは沢山書いて下さい。人がやった事は引用すればよい。但し、2007-2008年はSPVの話があちこち出てきますので大変です。全員、実験ノート(日本語)は残していると思いますのでそちらを参考に。
8 議論では図面を出したらそのコメントや議論を一つのパラグラフ以上で展開し記載する様にして下さい。5行程度以上が目安です。図面ばかり多く議論が少ない論文は事実の羅列になり、著者の議論できる能力が判断できません。また、「...temperature dependence of the SPV signal for .... is shown in Fig.45....]などと、図面がそこにあることと、その図面が何であるのかをテキスト中にもきちんと書く事も必要です。今まではこれが守られていなかった様です。
9 理論については、参考文献を上げれば済むところは数行で治める。どの論文にも書いてあるモデルや計算式をだらだら長く記載する必要はない。PPTSの理論もこれまで実に多くの学生諸君が書いていますね。自分の言葉で書かないのなら記載する必要はありません。

 

V 論文に使う図の書き方:カレイダグラフ作製上の様式

  我々の研究グループで論文などに図を描く場合のスタンダードとして統一します。
  原則的にはこれに従うこと。なお、カレイダグラフでない場合はこれに準拠して下さい。

1 図面は白黒が原則です。余程の理由がないとカラーは使いません。修士論文はカラーでも良いのですが、概要、投稿論文などは配布する必要があるため白黒にすること。プレゼンテーションにはカラーを使うのでカラーの原画は残しておくことが必要です。
  カレイダデータのカラム名を付ける時の注意です。実験室の測定PCから持ってきた時点では全てのデータが "Wave number", "Photon Energy", "Signal Intensity(mV)"・・・といった順番で並んでいます。このまま複数データをプロットすると凡例表示には全て"Signal Intensity(mV)"と表示され、どのデータのグラフか分かりません。"RT(mV)""bulk illumi. (mV)" など、適当な名称を付けてからグラフ化してください。
2 図中の温度など説明に使うフォントはArial20ポイント(18でも可)
3 通常は上と右の軸はスケールは付けない。左右軸を別にする場合はスケールを付ける。
4 複数の曲線の区別を説明する場合通常は、凡例として挙げるのではなく直接該当する曲線まで線を引き出して説明する。
5 arbitrary unita. u.とするのは良くない。同じ略号でatomic unitの場合があるため。JJAP原稿作成要領に従って、"arb. unit"にする。
6 横軸ラベルの付け方は「目盛りとグリッド」の所で、個数を自動にセットするのではなく、「間隔」にして、適当な数値間隔でラベル付ける。
7 小数点以下の桁をそろえる。「形式:固定」、「小数点:2」、末尾のゼロを表示するなど。
8 縦軸ラベルを付けないのなら、「ラベル」の項で「配置:なし」にする。
9 図のフォントはゴシック系のArialに統一する。
   * 軸ラベル(数値)= Arial 20ポイントスタイル標準
* 軸ラベル(文字)= Arial 24ポイントスタイル標準
* 目盛り、軸の太さ = 400%
* プロットの線幅 = 2.0
10 図のcaptionはその図と連動(グループ化など)する様にしておく方がよいでしょう。そうでないと、修正して行が変わったときに動いて何処へ行ったかわからなくなります。

 

W 英語で論文を書くときの注意

英語で論文を書くにあたって私の考え方に関わるコメントをしておきます。
学生諸君は論文を書くときの参考にしてください。

(1) 論文は読む人にわかるように書くものです。執筆者本人が内容を熟知しているためにその意志がなくても自然に説明を省略したり、あるいは簡略化していることが頻繁に見られます。従って、読者(査読者を含む)はほとんどが基礎知識しかないことに留意して可能な限り詳しく説明をすることが必要です。特に仮説や仮定の説明は念入りにお願いします。それが結論に大きく影響しますので、読者がモデルを理解できないと論文として成立しません。
(2) 文章を作るときは、JJAPPRの論文にある英語表現を参考にして下さい。但し、センテンス一つ(二段組の場合で1-2行程度?)以上引用する場合は上と同じで青文字とし、引用元を明確に記載にして下さい。著作権侵害にならないように十分注意して対応すること。
(3) 英語表現ですが、我々の表現も未熟ですので、我々で修正した後でも論文を投稿する前には一度業者へ添削に出すことを勧めます(お金があればの話ですね^o^)。昨年は何人かの学生諸君が経験したと思いますが、nativeに一度見てもらうと随分英語が良くなっています。
(4) 論文査読に関して、私の経験も含め、応用物理学会の代議員懇談会で出た意見です。査読や編集をしていると「めちゃくちゃな英語」で投稿してくる研究者が結構います。査読者は論文内容を検証する前に、まず筆者が英語で何を言いたいのか理解するために英語表現の理解(むしろイメージ作りですね)が必要になり、こちらに多大の時間を使ってしまいます。今まではどちらかというと、筆者が書きたい内容を査読者が想像し、その上で英語も含め査読を行うと言った習慣がありました。執筆者に優しい対応をしていました。でも今後は、「英語表現が悪く、査読者には内容が判読できない」との理由で、直ちにrejectしても良いという雰囲気になっています。学会側もただでさえ大きい査読者(ボランティアです)の負担を可能な限り軽減するためにもこのような措置を認める方向性が出ています。内容がわからない英語は、即rejectとする方向で考えて良いという事です。
(5) 従って学生諸君が英語論文を投稿するときは、我々教員がその英語の修正(読者にわかる英語表現に持って行く)だけでも多大な時間を要すると言うことに留意してください。特に教員の方でも常に英語の修正ばかりやっているわけにも行きませんので、原稿を出せばすぐ添削してくれて修正版が出てくる(戻ってくる)と思ったら大間違いです。博士課程学生の原稿でも多くの時間が必要なわけですから、修士学生諸君は更にもっと必要ですね。英語の原稿を学会締め切りなどの一週間前に持ってくると言う、暴挙というか失礼千万なやり方はもうやめてください。英語で発表をする場合には時間に余裕を持って原稿を提出てください。2006-2007年度は締め切りをきちんと守らない諸君のいかに多かったことか。原稿はその締め切りを十分留意して、十分な余裕を持って提出すること。

 

X PPT(S)に関する参考書(英文)

 PPTS(昔はPPASと言っていました)の理論に関する資料があります。著作権侵害にならないように気を付けた上で参考にして下さい。決してこの英語が手本になるとは言いませんが、native speaker(Mandelis)の目は通過していますので、悪い表現にはなっていないと考えます。今から見たら私の英語も未熟ですが(特に1987年頃は)。修士論文等に引用する場合は引用元は明記して下さい。

PPTS_text01 T. Ikari and A. Fukuyama
"Semiconductor and Electronic Materials" in Progress in Photothermal and Photoacoustic Science and Technology,
ed. by A. Mandelis and P. Hess, SPIE Press, USA, 2000, pp. 146-175
  これは比較的新しいのですが名称はPPASになっています。
PPTS_text02 T. Ikari, S. Shigetomi and Y. Koga
Photoacoustic and Photothermal Phenomena in Semiconductors,
ed. by A. Mandelis, North-Holland, 1987, pp.397-440
  これは古く、当時の状況をまとめたものです。参考文献を引用する際の文章表現の参考程度にはなると思います。
  それから実験方法の英語表現については、我々の研究室の論文(Fukuyama, Sakai, Ikari, etc.が公表したPhys. Rev., J. Appl. Phys., Jpn. J. Appl. Phys.)を参考にして下さい以下の(ホームページからリンクしています。出版元に著作権が移っており勝手にコピーは出来ませんが、我々が書いた英文ですから充分に参考になると思います。
   http://www.pem.miyazaki-u.ac.jp/~ikari/publishedpaper_index.htm