微結晶シリコン太陽電池の光学的性質

Optical characterization of microcrystalline Si solar cells

解説書: 圧電素子光熱分光法による微結晶シリコン薄膜の光吸収スペクトル
碇、境、福山; 超音波TECHNO2004年 9-10月号 pp.75-82

 

現在、シリコンを用いた太陽電池は身の回りに多く見られますが、コストの安い多結晶シリコン太陽電池は、太陽光の波長範囲で光学吸収係数が小さいため未だ効率が十分得られていません。一方、アモルファス(非晶質)シリコンは、吸収係数が大きく効率が高くなりますが光による劣化が大きいため、太陽電池としては不十分です。

そこで、この両者の弱点を解決し、効率の更によいシリコン太陽電池として期待されるのが、微結晶シリコン薄膜太陽電池です。この薄膜は既に実用化の段階に入っていますが、その構造の複雑さのためにも未だ改善の余地が十分にあります。特に、微結晶相と非晶質相が混在する事による光学的性質、或いは電子輸送特性(抵抗率など)が未解明です。また、工業的には製品のコスト低減のために不可欠な高速製膜技術の開発も急がれているいる分野です。

図にはこの微結晶シリコン薄膜の製造プロセスの違いによる吸収スペクトルを、我々が開発したPPTS方によって測定したものを示しています。その結果薄膜を高速で制作した場合に出現する幾つかの問題点が発見されました。微結晶構造を持った薄膜の光学的測定は難しく、特に吸収係数を測定しようとしても、結晶粒界の光散乱により、正確な値が測定できません。PPTS法はこの弱点を克服した新しい測定技術であり、有用な新規評価技術として、期待されています。

(応用物理学会欧文誌JJAP、超音波シンポジウムなどで発表)