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  NIOSH 姿勢解析ソフトとデータ

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作成:瀬尾明彦

1. NIOSHI  :荷物取扱い作業による腰痛予防を目的とした作業評価や作業設計支援ソフト
        (Windows 98/Me/XP上で作動します。)
    ソフト : nle096a.lzh (1.85 MB)
    DATA 01
 動画1 動画2 動画3 動画4
     DATA 02 

2. 概 要
  本ソフトは、米国NIOSH(国立労働安全衛生研究所)が提案した筋骨格系障害予防のための
  荷物取り扱い評価式のためのソフトである。NIOSHの評価式には単一タスク用と複数タスク用があるが、
  本ソフトはその両方に対応している。

3. 入力方法ならびに入力すべき数値

1)平均荷物重量Lav(kg)と最大荷物重量Lmax(kg)
 取り扱い荷物の平均と最大の重量をkg単位で入力する。

2)荷物の水平位置H1, H2 (cm)
 足位置から荷物を保持している手位置までの水平距離を、荷物の移動元(H1)と移動先(H2)の両方でcmの単位で入力する。なお、足位置は足首の位置とし、足が前後している場合は左右の足首の位置の中点を足位置とする。手位置は握りの位置とし、左右の手位置が異なる場合は左右の手位置の中点を用いる。
 注1)水平位置は63cm以下であるべきで、25cm以下が理想的である。
 注2)本基準は両手での荷物取扱い作業のみを対象としている。

3)荷物の垂直位置V1, V2 (cm)
 床から荷物を保持している手位置までの垂直距離を、移動元(V1)と移動先(V2)の両方でcmの単位で入力する。手の位置は、「荷物の水平位置」と同じように定義する。
 注1)垂直位置は175cm以下であるべきである。
 注2)荷物の移動距離(V1とV2の差)は、175cm以下であるべきで、25cm以下が理想的である。
 注3)本基準では、持ち上げと降ろしの区別をしない。従って、非常に速い持ち上げ動作(おおよそ1秒以内に75cm以上の距離を上げ下げする動作)や落としたり投げるなどの荷物取扱い動作には適用できない。

4)ひねり角A1, A2 (度)
 荷物が体の正面から何度ずれた位置にあるか示す角を移動元(A1)と移動先(A2)で度の単位で入力する。この角は、床上における両足首中点を角度計測の中心とし、体の正面に荷物がある場合を0度、体の真横にある場合を90度としする。
 注1)ここで定義するひねり角Aは、荷物の位置を示す値であって実際の体のひねり量を示す値ではない。
 注2)ひねり角は、135度以下であるべきである。

5)持ち上げ頻度Fと作業時間LD
 1分間あたりの荷物の持ち上げ頻度(回/分)と作業時間と作業時間(時間)を入力します。持ち上げ頻度は、少なくとも15分間、作業を続けて観察して決めます。休憩が挿入される場合の作業時間の決定には、作業時間と休憩時間の長さの比に注意する必要があります。

6)結合タイプ
 荷物の持ちやすさが良好、普通、不良のいずれにあたるかを指定する。
1)良好:よい握りがある箱やコンテナがこれにあたる。柔らかい物や凹凸のある物も、手で包み持つことが簡単ならこれにあたる。
2)普通:握りが最適でない普通の箱やコンテナがこれにあたります。柔らかい物や凹凸のある物では、指を容器の下に入れてほぼほぼ90度屈曲させて保持できるならこれにあたる。
3)不良:握りが不適切な箱や容器および持ちにくい物がこれにあたる。

7)特別制御
 荷物を移動先で置く際に、荷物の握りなおしをする、しばらく保持する、正確に位置決めするといった必要が必要な場合は、特別制御ありとする。そうでない場合は、特別制御なしとする。

4. 基本的な使用法
 ソフトを起動すると、メインウィンドウ(兼単一タスク解析ウィンドウ)、複数タスク解析用のウィンドウ、それに結果表示ウィンドウの3つが表示される。
 単一タスクのみの解析であれば、メインウィンドウにデータを入力して[計算]をクリックすると結果が表示される。
 複数タスク解析をする場合は、複数タスク解析のウィンドウでデータを入力する。これも、データを入力して[計算]をクリックすると結果が表示される。
 結果表示ウィンドウには、結果の要約が表示される。
 なお、本ソフトではのべ5個のタスクを入力できる。単一解析の場合も、タスク番号のところを変えると、複数タスクとして解析することができる。

5. 評価方法

1)持ち上げ指数LIについて

 持ち上げ指数LIは、与えられた作業条件がどの程度腰痛の発症リスクを持っているかを示す総合的な評価指数として利用できる。値としてはできるだけ小さいのが良いが、1以下にすれば腰痛の発症リスクは抑制できるとされている。なお、LIが1から2になるとどの程度腰痛発症が実際増加するのかといったLIの量的評価については十分な情報は今のところ提供されておらず、今後の研究を待つ必要がある。
 LIは複数の作業の比較にも利用できる。通常、異なった条件の作業の負担度の強弱を比較することは困難であるが、LIを作業ごとに求めて比較すれば作業の負担度あるいは改善の重要度の順位付けも可能となる。
 LIは特別制御の影響評価にも利用できる。つまり、もし移動元より移動先のLIが大きい場合は、特別制御が不要なように作業改善ができないかを検討する意義があると判断される。

2)各係数について
 HM,VM,DM,AM,FM,CMの係数の値を比較することで、通常は困難な作業条件のどこを改善するのが最も有効かといった作業要因の順位付けが可能になる。HM,VM,DM,AM,FM,CMの係数は全て0〜1の範囲を取るが、このうち最も小さい値を取る係数が最も大きい負担度を持つ要因と判断される。値の小さい係数から改善を進めていけば効果的である。各係数を1に近くするような一般的な改善法として次のようなものがある。

3)複数タスク解析について
 総合持ち上げ指数CLIは、1より大きければある程度の障害を発生させるリスクがあると判断される。
 タスク別のLIであるSTLIは、それぞれ1以下であるべきです。改善をするには最も大きい値のSTLIを示したタスクから改善を試みる。全てのタスクのSTLIが1以下であってもCLIが1より大きい値の場合も同様に改善をする必要がある。
 タスク内での改善については、単一タスクの場合と同様に、最も小さい係数を与える要因を重点的に改善するといった方法を取ればよい。