1)課題について

2)実施風景・結果とコメント

平成14年度デザイン課題実施報告
(遠投浮きの開発)

本報告は1)課題について,2)実施風景・結果とコメント,3)学生の感想 の順となっています.

遠投釣りと遠投つり用浮き
 遠投仕掛けはみち糸,浮き止め,浮き,天秤,篭,ハリスと針からなる.仕掛け着水後浮きの浮力で篭と針は水面下適当な深さに到達する.遠投釣りの長所として安全な足場とポイントの確保が容易で,釣果が深瀬釣りより安定していることが挙げられる.
 遠投釣りは仕掛けを遠くまで飛ばして釣ることであり,仕掛けをより遠く飛ばすことが望ましい.仕掛けの飛行性能は主として篭と浮きの形状によって決まる.自然環境の中で投げによる飛行なので,あらゆる方向からの風及び人の不均一の力でバランスの良い飛行姿勢が飛距離,または釣果につながる.
 遠投浮き作りのコツとして,空気の抵抗を減らす浮きの形は断面は円形,側面は流線形で,表面も滑らかにすることが必要である.また,最大直径と長さとの比については,細長くした方が空気抵抗が低いが,細長い浮きは横風に弱く飛行の時不安定な回転が生じてしまう.安定性を図る(飛行時の回転を防ぐ)ため浮きを短くしたいが浮力を得るため断面積を増やす必要があり,その結果空気抵抗を増大してしまう.さて,どうすれば形の良い,ツルツルの浮きを作れるのか,トライ・アンド・トライ.

遠投浮きの仕様と製作条件
 ・浮力要求:10号(約41g)おもりで浮き,15号(約58g)おもりで沈む.
 ・中心穴:みち糸のガイドの挿入のため,浮きの中心に直径3mmの鉄棒を通す.
 ・材料:発砲スチロール
 ・表面仕上げ:サンドペーパー
 ・加工手法:カッターナイフ,二クロム線などを用いた手加工
 ・浮きの形状:自由設計(流体力学,感,センス,加工工程等が問われる)
 ・浮き製作時間:20分以内

設計・試作の内容
 上記の円筒浮きを手作りで製作するため,浮きの形状を設計し,加工工程,加工手法を考え,加工に必要な工具を設計・製図・製作して浮きの製作を行う.

必要と思われる加工項目(順番は各自で決める)
 材料準備,中心穴開け,外径削り,外径仕上げ,(糸を通すための)芯入り,塗装

提出要件
  @「設計説明書」(設計仕様,製品の形状,加工方法,加工工程など記入)
  A浮き加工用工具の図面,加工工程,完成品
  B完成した浮き

図面を見ながら製作しているが,途中設計変更も少なくない.
製作のことも考えて設計すべきです.
罫線中
糸のこぎりによる浮きの形板作成
ワンタッチで形板を換えいろんな形状の浮きを作れるのが特徴です.しかし,写真の浮きはおそらく遠くへ飛ばないでしょう.
コンパクトなデザインですね.材料のサイズに制限がありますが.
浮きのサイズを自由に変えられるのが特徴ですが,使い辛いではないか.
使いやすい工具です,工作もよいですね.
浮き削る工程がちょっとわかり辛いです.理想が高すぎかなぁ.
形板と浮きが離れすぎで工具が高すぎです.そのため使用時
不安定ですね,4人の共同作業なので,コストは高いです.
一所懸命やっていましたね.やっぱり"Simple is best"かな.
構造が複雑すぎです.カッターを固定しないと形の揃った浮きを作れません.
使いやすい(安定性がよい)工具です.
工具全体は4つ棒の平行リンク機構なので,安定しないでしょう.
ワイヤで形を作ることがよい発想です.加工のしっかりしていて,ポイントは高いですね.

3)学生の感想

○ 設計の段階で様々な問題に対応できるようにしなければいけないと思いました。
○ 工具などを複雑に考えすぎてしまった。もっとシンプルに考えた方が良かった。
○ 非常に大変であったが,それ以上に有意義であったと思う。
○ .この実習で考えた事やした事を将来の技術者となる私に活かしたいと思う。
○ 作りたい物を図面からおこし,完成させるまでの大変さが理解できた。
○ 加工する時の事も考慮しながら設計・製図をしないといけないと思った。
○ 設計から加工に至るまで時間をかけ,自分達で行ったので本当に勉強になったと思う。
○ 様々な誤算が出た時,解決するための意見の出し合いや試作が楽しく,また是非機会があるのなら違う物にも挑戦してみたいを思った。
○ 流体力学や,製図,工具のコスト,作業,機械の使用等,これまでに学んだことの色々な分野の復習をすることができた。
○ 今までの実習や学習で得た技術などを使い一つの物を作る事の難しさ(が分かり,)様々な事を得ることができ,とても一生懸命になれた講義だったと思う。
○ 仲間と話し合いながら問題を解決していき,最後には浮きがうまく作れるような工具を完 成することができ良かった。

 本課題の狙いは浮きを作るのではなく,浮きおよびそれを作る工具の設計と製作を通して,製品開発の手順とやり方および設計と製作中の問題の解決などを体験して習得することである.半期にわたっての苦戦の結果,品質に違いがあるが全員は所定仕様に満たす浮きを作ることができた.設計と製作中の主な問題点として以下の数点がある.
 1)過剰な設計:実務経験がないため,余分な固定や材料の使用が多い.
 2)難しい構造と加工方法:"Simple is the best"との言い方がある.一概には言えないが,目的を達成するためできるだけシンプルなやり方の方がよいのである.“それをやるために最低何かが必要なのか”を考え,そのためのもっとも簡単かつ確実な方法を取ることが第一である.これから物事の基本や原理などをよく見て考えてほしい.
 3)理想と現実とのずれ:これもあれも機能の充実ばかりを考え,加工能力,設備状況を無視した設計は少なくない.現実を考慮した柔軟な設計能力がエンジニアとしての必要条件である.
 4)加工知識の欠如:“M6のねじ穴をφ6のドリルであけますか”のような程度の質問がよく聞かれた.悲しい!責任を感じます.
 失敗は成功の母である.“新しい設計の第一次案は60点である”と言う技術者がいる.このことを考えれば皆さんの合格は当然である.残りの課題として,60点のものをどうすれば80,90点にできるかを考えてください.
                                      担当教官  Deng Gang