科学研究費補助金基盤研究(A)海外学術調査

チベット−トランスヒマラヤ高山草原における

生態系保全型放牧システムに関する研究
 
研究の目的
 ヒマラヤ山脈周域はトランスヒマラヤと呼ばれ、広大な高山草原が広がっています。近年、地球温暖化の影響により高山草原の乾燥化が進行し、過放牧などにより植生の荒廃が進み、植物種多様性と家畜生産性の低下が危惧されています。本研究は、ヒマラヤ山脈北東に位置するチベット高原と南西に位置するインドのジャンム・カシミール州での少数民族による放牧方式の違いが生態系物質循環と動植物種多様性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としています。放牧草食動物(ヤク・ヒツジ・ヤギ)の採食行動、植生調査、放牧方式調査、生態系物質循環評価、クチグロナキウサギの行動生態、動物体毛同位体元素分析と衛星画像解析による広域植生時空的評価から、放牧草食反芻動物種と放牧方式(遊牧・移牧)の違いが高山草原生態系へ及ぼす影響を総合的に解明します。チベット高原とトランスヒマラヤ高山草原の砂漠化防止と動植物種多様性および生態系保全が最終目的です。


研究期間:
 平成23年度〜平成25年度

研究代表者:
 長谷川 信美 宮崎大学農学部・教授

研究分担者:
 井戸田 幸子 宮崎大学農学部・助教
 西脇 亜也  宮崎大学農学部・教授
 平田 昌彦  宮崎大学農学部・教授

連携研究者:
 山本 直之  宮崎大学農学部・教授
 飛佐 学   宮崎大学農学部・准教授
 多炭 雅博  宮崎大学農学部・准教授
 木村 李花子 東京農業大学・教授
 福田 明   静岡大学創造科学技術大学院・名誉教授

海外共同研究者・研究協力者:
宋 仁徳    玉樹総合試験場・場長(中国)
        玉樹蔵族自治州畜牧獣医センター・所長
李 国梅    玉樹蔵族自治州草地センター・高級(草原)畜牧師(中国)
Hans Schnyder  ミュンヘン工科大学・教授(ドイツ)
Rashid Y. Naquash (元)ジャンムー・カシミール州野生動物保護局・局長(インド)


研究項目
I.チベット高原南部における放牧動物種と放牧方式が高山草原生態系に及ぼす影響
I-1.放牧動物種が生態系物質循環と植物種多様性に及ぼす影響
I-2.ヤク放牧方式が生態系物質循環と植物種多様性に及ぼす影響
I-3.チベット高原牧畜生産方式の現状と変遷に関する調査
II.クチグロナキウサギの行動生態と草原生態系物質循環に及ぼす影響
II-1.クチグロナキウサギの行動生態に関する研究
II-2.クチグロナキウサギが草原生態系物質循環と植物種多様性に及ぼす影響
III.インド国ジャンム・カシミール州における遊牧が高山草原生態系に及ぼす影響
III-1.ダシガン国立公園グッジャル族遊牧が高山植生と植物種多様性に及ぼす影響
III-2.ラダック高山草原チベット族遊牧が植生と植物種多様性に及ぼす影響
IV.チベット—トランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動
IV-1.動物体毛中13C含量によるチベット—トランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動評価
IV-2.衛星観測データによるチベット—トランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動解析