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研究内容

2008/1/14

知られざる宮崎県の巨大魚アカメ(マルカ)


アカメLates japonicus Katayama & Taki, 1984 体長50 cm 宮崎県延岡湾赤水定置 東海大学の魚類図鑑掲載写真 岩槻撮影


宮崎県耳川河口産アカメ 鴨川史郎氏釣獲(山出潤一郎氏経由で写真拝受) 全長約120 cm (絞めた後117 cm) 眼が赤く光っています!

 日本のアカメは、インド・西部太平洋に分布するLates calcariferと同じ種類であると長く考えられてきた。その後、片山・多紀(1984)によってアカメLates japonicus Katayama and Taki, 1984として日本の固有種として新種報告された。しかし、日本におけるアカメの正確な分布範囲は不明であった。宮崎県では昔からマルカと呼ばれ、全長1.5メートル、体重50kg近くにもなると考えられる河口に生息する日本の巨大魚である(Iwatsuki et al., 1993)。こんな日本の小さな河口でよく今まで生き残ったものである。
 地元民の聞き込み調査では、明治初期頃には、一ツ瀬川河口のタンボリで、7尺55貫(全長2.1 m 体重220 kg)の記録があることを確かめている。このことから、同属の淡水魚でも知られるナイルパーチLates niloticusでも公式の記録は全長2 mであることから、ほぼ同じかそれ以上になることは間違いなさそうである。汽水では世界最大の大きさになる種類とも言え、日本の小河川とも言える宮崎県の日向灘の河川河口周辺に生息する。
 Iwatsuki et al. (1993)はアカメの正確な分布ならびに出現パターンを299個体の記録に基づいて調査した。これらの記録のうちの86.4%(254個体)は汽水域から,また残りの13.6%(40個体)は海域からのもので,純淡水域からの記録はなかった。
 本種は,稚魚から成魚のサイズまでの全サイズがみられるのは、南日本太平洋岸の宮崎県の日向灘と高知県の限られた水域にのみ分布する(かっては徳島県南部)。南西・琉球列島ならびに東シナ海・瀬戸内海には基本的には分布しない(Iwatsuki et al., 1993)。
 なお、吸水した成熟卵を持つアカメの産卵親魚は、岩槻の過去の調査から宮崎県の大淀川河口(雌)で確認されている(Iwatsuki et al., 1994)。また一ツ瀬川と大淀川中間の沖合(2 km)の沿岸表層でアジの旋網に精子が総排泄口からダラダラ出た雄を、それぞれ1個体のみ採集・確認している(未報告)。しかし、正確な産卵場所は不明である(Iwatsuki et al., 1994)が、吸水卵を持った雌のアカメが河口域で捕獲・観察され、精子を出している雄アカメが河口の淡水の影響を受ける範囲で採集されていることから、淡水の影響を受けている河口か、淡水の影響を受けている沿岸域で産卵しているものと考えられる。
 また、飼育実験により、冬期の厳冬期には成長が止まるもの、夏期にはかなりの成長がみられることが明らかとなった(田代・岩槻, 1995)。環境省の絶滅危惧IB類(EN)環境省レッドリスト)(2007年)に絶滅の恐れのある希少種に指定されている。宮崎県の県魚とも言える魚でもある。2006年宮崎県の条例で捕獲及び売買が禁止になった。宮崎県では、北部よりも南部の減少が激しいように思われる。早急な何らかの対応策が必要であると考えられる。

アカメは、河口生態系の頂点に立つ、言わば、ライオンである。当たり前のことであるが、これだけ大きくなるには河口域が相当豊かでないと、彼らは生きていけない。昭和40年代頃までは、大淀川河口で他の魚を追い回すアカメが多くなると、アカメ退治が行われていたと古老から聞く。

関連リンク
アカメの国




文献
  • Katayama, M. & Y. Taki. 1984. Lates japonicus, a new centropomid fish from Japan. Japanese Journal of Ichthyology(魚類学雑誌), 30 : 361-367..(原記載)
  • 荒賀忠一・田名瀬英朋 1987. 和歌山県沿岸におけるアカメの採捕記録. 京都大学瀬戸臨海実験所報 1:59-61.
  • Iwatsuki, Y., K. Tashiro and T. Hamasaki. 1993. Distribution and fluctuations in occurrence of a Japanese centropomid fish, Lates japonicus. Japan. J. Ichthyol., 40(3): 327-332.
  • Iwatsuki, Y., K. Tashiro, M. Endo and H. Ono. 1994. The matured female of the Japanese centropomid fish from the Oyodo River estuary, Miyazaki Prefecture. Bull. Fac. Agri., Miyazaki Univ., 41(1): 11-14.
  • 鍋島靖信・安部恒之・日下部敬之・山本圭吾・波戸岡清峰 1994. 大阪湾でアカメがとれた.Nature Study 40(3): 2-4.
  • 田代一洋・岩槻幸雄. 1995. アカメの飼育における成長と摂餌特性.日本水産学会, 61(5): 684-688.
  • 木下 泉・岩槻幸雄. 1996. アカメ 平成7年度 希少水生生物保存対策事業 日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(III). 水産資源保護協会(東京), 156頁.
  • 津村英志・水野晃秀・山本孝雄・須田康彦・山本貴仁. 2003. 宇和海周辺で記録されたアカメ. 愛媛県総合科学博物館研究報告,No.8,23―26.
  • 明石英幹・栩野元秀 2008. 香川県沿岸域から初記録のアカメLates japonicus. 南紀生物 50(2): 235-239
アカメ調査隊いざ出陣-マルカに魅せられて1500km- → 近々アップ予定

 
 
 
 
宮崎大学農学部 宮崎大学農学部生物環境科学科 水産科学講座