2012/10/12
九州や四国のイワナは全部移入・放流か?
自然分布のイワナが九州•四国には本当にいないのか?
九州や四国には、一般的に自然分布のイワナはいないというのが通説である。近年多くの河川源流部にイワナの生息していることが観察される。それらは個人的に本州からから持ち込まれて放流されたものが殆どであろう。
しかし、そのイワナの自然分布の全体像が分かったのは戦後で、比較的新しいのだ。それを報告したのは東京大学理学部大島正満博士が発表した「日本産イワナに関する研究」(鳥獣集報 18(1), 3-70, 1961年3月)による。その後、稲村・中村(1962)などの重要な報告があった。前者は昭和36年であり、後者は昭和37年である。
この年代は日本の高度経済成長の時代と一致するが、まだイワナの人工養殖もままならない時代でもある。しかし、調べていくと、九州にはエノハ(ヤマメ・アマゴ)と区別してイハナの類として大正時代に記録し記載されている所もみつかった。また、四国は、上記の頃以前にもイワナがいたという話があり、昔からその手の話は根強い。ある河川では、アメゴ(雨子)と区別して黒マスと呼ばれて名前まで伝承されてきた所もある。
目撃や採集の記録は殆ど無いが、南限イワナと認められてきたキリクチ(奈良・和歌山)を含め氷河期に南下してしてきたことを考えると、四国や九州は南限に近いところで有り、散在的な分布をしていたためにあまり知られず、また四国・九州にはイワナはいないという報告が本や雑誌に知られたため、この素朴な疑問が十分検証されなかった可能性が残る。
この素朴な疑問を解決するため、数年前から私どもの研究室では、一部高知大学の関 伸吾博士と協力しながら取り組み始めた。結果ついては随時公の場で報告していきたいと考えている。現在四国で一カ所、九州で一カ所、可能性が高いところを調査中である。
もし昭和30年以前や戦前にイワナがいたという確からしい話(写真や記録等の記載や)があれば、調査をしてみる価値があります。ぜひご連絡ください。昔の乾燥標本や冷凍の標本や組織があれば、DNAの分析が可能で、知られていない特異なパターンが出ればすぐに答えが出るかもしれません。
特に実際に少数いたかもしれないが、その後個体数が少なくなり、人為的に放流された河川の可能性のある所もある。従って、放流されたもののと即断して決めないで、脂びれ(ハサミで切除)や尾鰭、臀鰭の一部(5mmx5mm)もあればすぐ分析できます。協力してもらえる人は、下記の通りです.ご連絡していただけるとありがたいです。
連絡先:
〒8892192 〒889-2192 宮崎市学園木花台西1-1
宮崎大学農学部海洋生物環境学科 岩 槻 幸 雄(いわつきゆきお)
TEL 0985-58-7222; FAX 0985-58-2884 E-mail: yuk@cc.miyazaki-u.ac.jp
文献
- 大島正満 (1961) 日本産イワナに関する研究. 鳥獣集報 18(1), 3-70.
- 稲村彰郎・中村守純 (1962)日本産イワナ属魚類の分布と変異 資源科学研究所業報資源科学研究所業報 58・59: 64-80.
アカメ調査隊いざ出陣-マルカに魅せられて1500km- → 近々やっとアップ予定かも?
|