Laboratory of Pomology, University of Miyazaki |
宮崎大学農学部植物生産環境科学科 |
果樹園芸学教育研究分野 |
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宮崎県の果樹 |
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宮崎県で生産されている果樹を紹介します. |
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ヒュウガナツ (Citrus tamurana hort ex. Tanaka) |
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ヒュウガナツ(日向夏)は宮崎県原産の代表的な特産園芸作物のひとつで、文政年間(1818~1829年)に現在の宮崎市赤江曽井、真方安太郎氏の宅地内で偶発実生として発見されました。ヒュウガナツは晩生カンキツで、その形成にはユズとブンタンが関っていると考えられていますが明確にはされていません。強い自家不和合性を持ち、かつ単為結果性をもたないため結実のためには他家受粉が必要で、その結果、果実中に多数の種子が形成されます。ヒュウガナツを食べるときは、皮の外側の黄色い部分(フラベド)のみをナイフで剥ぎ、皮の内側の白い部分(アルベド)と中の果肉を一緒に食べます。現在の宮崎県におけるヒュウガナツ生産は栽培面積が約150ha、生産量は3,500t程度で、宮崎市清武町・綾町・北郷町・日南市で県内の生産量の80%が栽培されています。ちなみに高知県ではヒュウガナツは小夏(こなつ)と呼ばれ、ヒュウガナツの枝変わり系統である‘宿毛小夏’などが栽培されています。 |
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マンゴー (Mangifera indica L.) |
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マンゴーはインドからミャンマー、マレー半島にかけてが原産と考えられている熱帯果樹です。世界的にみて、マンゴーは果樹生産量が第5位で世界の総果樹生産量の5.3%を占める極めて重要な果樹です。マンゴーの品種はインドで発達した単胚性品種と、東南アジアで発達した多胚性品種とに大別されています。現在マンゴーの品種群は極めて多様に分化していて、インドだけで1000品種、タイでも200品種以上が存在するといわれています。現在、日本では宮崎県をはじめ沖縄県・鹿児島県などの温暖な地域を中心に栽培されています。また日本で栽培されている品種のほとんどはアメリカのフロリダで育成された‘Irwin(アーウィン)’です。現在宮崎県では宮崎市、西都市、日南市、串間市など16の市町村で栽培されており、栽培面積は90ヘクタールで年間1,200トンのマンゴーが生産されています。 |
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ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.) |
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ウンシュウミカンは江戸時代に鹿児島県長島(現鹿児島県出水郡東町)で発見された果樹で、現在日本でもっとも多く生産されている果樹です。宮崎県では現在栽培面積約500ha、生産量8,000tとなっていますが、そのほとんどは早生系統です。県内では日南市から延岡市にかけて、年平均気温15.5度以上の沿海地域で生産されています。現在宮崎県では、日南市において発見された優良枝変わり系統の極早生品種‘日南1号’への更新が進められています。この品種は日南市東郷町の野田明生氏が自らの栽培園の‘興津早生’の枝変わりとして発見したもので既存の極早生品種に比較して、樹勢がよく、早熟生で果実品質も優れることから平成元年9月に品種登録されたものです。また現在では消費者の高品質果実へのニーズに対応するために高畝、マルチ栽培等による高品質果実生産が進められています。 |
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キンカン(Fortunella spp.) |
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キンカンはミカン科キンカン属に属する植物で、宮崎県で栽培されているのはほとんどが寧波(ねいは)キンカン(ニンポウキンカン)(Fortunella crassifollia)です。キンカンは他のカンキツ類とは異なり、果皮を食べる果物です。キンカンは生食のほか、甘露煮、シロップ漬けなどにもつかわれますが、宮崎県で栽培されるキンカンはほとんどが生食用で、樹上で完熟させたものを「完熟きんかん」として販売しています。さらに完熟きんかんの中でも、糖度が18度以上、直径が3.3センチ以上の特に品質が優れたものを「たまたまエクセレント」というブランド名で販売しています。現在宮崎県では、110ヘクタールで栽培されており、出荷量は2,600トン、販売額は16億円にもなっています。 |
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クリ (Castanea spp.) |
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主な食用グリにはニホングリ、チュウゴククリ、ヨーロッパグリの3種があり、日本で栽培されているのは主にニホングリ(Castanea crenata Sieb. et Zucc.)で、日本と朝鮮半島南部に原生しています。野生種はシバグリといわれ、縄文時代から食糧として利用されてきました。栽培グリはシバグリが改良されたもので、江戸時代には「丹波栗」が有名となりました。大正時代以降、クリ栽培は盛んになりましたが、1950年代のクリタマバチの被害で、栽培は激減しました。現在はクリタマバチの被害を受けにくい‘丹沢’や‘筑波’などの抵抗性品種が植えられています。宮崎県では須木村(現小林市)・日之影町・西郷村(現美郷町)を中心に産地を形成しており、福岡県や首都圏を中心に出荷されています。県北で作られている果実は「くりきんとん」などの和菓子の材料としての評価が高く、中京地方の菓子メーカーが購入しています。宮崎県の栽培面積は約600ヘクタールで、生産量400~500トンとなっています。 |
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カキ (Diospyros kaki Thunb.) |
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カキは中国原産の果樹であると考えられていますが、日本にはかなり古い時代に渡来したとみられており、平安時代に発行された延喜式や本草和名には果樹としてのカキが既に記載されています。カキは変異性が大きく、800から1000品種が存在すると考えられていますが、一般的に脱渋と種子形成との関係により4つのタイプに分類されます。つまり、1)種子の有無に関わらず甘ガキとなる完全甘ガキ(PCNA)、2)種子が存在する場合のみ甘ガキとなる不完全甘ガキ(PVNA)、3)種子が存在すると種子の周りのみ渋味が消失する不完全渋ガキ(PVA)、4)種子の有無に関わらず渋ガキとなる完全渋ガキ(PCA)の4タイプに分類されます。この中で完全甘ガキは日本において分化した品種群であり、中国、韓国には完全甘ガキは存在しません(しかし近年中国において独自に完全甘ガキに分化したと考えられる‘羅田甜柿(らでんてんし)’が発見されました)。宮崎県では約50ha栽培されていますが、約4割の10haを完全甘ガキである‘富有’が占めています。近年農林水産省果樹試験場(現農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所)で育成された新品種‘太秋’の食味が優れることから、宮崎県においても‘太秋’の導入が積極的になりつつあります。 |
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