Laboratory of Pomology, University of Miyazaki

宮崎大学農学部植物生産環境科学科

果樹園芸学教育研究分野

 

研究紹介

 

下に挙げているのは当研究室で現在行われている研究です。学生よりこの他に実験テーマに関する希望があれば柔軟に対応して行っています。

 

・カキ優良台木への接ぎ木による苗木生産とその評価

 リンゴなどの高木性の果樹では、樹を大きくしない台木(わい性台木)が開発され、その利用は全世界で広まっています。樹が小型化すると、栽培管理は容易になり、軽労働化だけでなく、減農薬栽培や中山間地での普及に対応できます。しかしながら、多くの果樹ではわい性台木の開発が進んでいません。宮崎県総合農業試験場で行った果樹の研究者や普及指導者へのアンケート調査においては、カキやクリ、マンゴーなどにわい性台木が必要だとされています。当研究室で挿し木手法を開発したカキ‘MKR1’Miyazaki Kaki Rootstock No.1, 平成27年品種登録完了、登録番号:第23898号)を台木とした‘富有’や‘平核無’の苗木を木花フィールド(農場)に植えて栽培試験を行った結果、‘MKR1’が優れたわい性台木であることがわかりました。現在、宮崎総農試をはじめとした18の公設試験研究機関においてカキわい性台木連絡試験が開始されています。一方、塩類土壌の広がるイスラエルではカキの根が育ちにくいため、類縁種のアメリカガキが台木として使用されており、その苗木生産方法についての国際共同研究をイスラエル農業省The Volcani Centerと行っています。

 

・大量繁殖を目的とした組織培養

 草本性植物と異なり木本性植物である果樹は、組織培養できる種類(品種)は残念ながら多くありません。試験管内での成長が緩慢であるとか、成長阻害物質の影響が大きいとかがその原因だと考えられていますが、組織培養ができれば、同一クローンの大量繁殖、突然変異体の作出、遺伝子組み換え実験等、多くのことが可能になります。今まで組織培養ができなかった、あるいは効率的に大量繁殖できなかったマンゴー、ニホンナシ、ニホングリ、グアバ、ライチなどの組織培養を試みています。

 

・挿し木繁殖に関する研究

 一般に果実の種子をまいても、その樹には親と同じ果実はなりません。枝を取ってきて、それを挿し木して根を出すことができれば、立派な一本の苗木が完成し、親と同じ果実を付けさせることができます。しかし、挿し木繁殖が簡単にできる果樹は限られており、挿し木繁殖の困難な果樹の挿し木を成功させるにはいろいろ工夫が必要です。今まで不可能といわれてきたカキの効率的な挿し木繁殖方法に成功し、現在は実用化を目指して(株)山陽農園と共同研究しています。また、クリ(スロベニア国リュブリャーナ大学との共同研究)、マンゴー、ミラクルフルーツ、スターフルーツ、グアバなどの材料を用いて挿し木繁殖を試みています。

 

・ヒュウガナツの自家不和合性と種子形成に関する研究

 ヒュウガナツは宮崎県特産の果樹ですが、自家不和合性といって自分の花粉が雌しべについても受精せず種子ができない性質を持っています。そのため栽培現場では受粉樹や人工受粉が必要となります.その結果,得られた果実には大量の種子が入りますが,これは商品価値を決めるうえであまり好ましいことではありません.このヒュウガナツの枝変わり系統に,‘西内小夏’という品種があります.この品種は自家和合性で,さらにできた種子はしいなになるという,農業生産上重要な2つの性質を併せ持っています.当研究室ではこの品種に着目し,なぜ自家和合化しているのか,種子のしいな化はどのようなメカニズムによるものなのかという点について調査を行っています.

 

・マンゴーの新たな育種技術の開発

 園芸作物において新たな品種を作り出すには,親植物が確実に分かるように人工交配を行い,得られた大量の実生を育て,その中から良い形質を持った個体を選抜するのが一般的です.しかし,マンゴーの場合,花が極めて小さいために人工交配を行うこと自体が難しく,また何とか交配を行っても結実率が他の果樹に比べて非常に低いため,選抜を行うために必要な十分な数の実生が得られません.そこで,人工交配を行わず,ハチなどを使って自然受粉させ得られた実生が育種に使えないか検討しています.ハチに交配させると,得られる果実数は多いのですが花粉親が不明になるので,DNAマーカーを用いて花粉親を同定できるかを調べています.

 

・ドリアンの生殖生理の特徴の解明とそれを利用した新たな受粉方法の開発

 ドリアンは"果物の王様"と呼ばれる熱帯地方を代表する果樹です.ドリアン生産において商品価値の高い果実を生産するためには,人工受粉を行って確実に種子を形成させることが必要ですが,ドリアンの花は夜に咲くために,生産者は夜にヘッドライトを頭に着けて果樹園に入り,人工受粉を行っています.これは非常に労力がかかり,かつ危険を伴う作業です.しかし,花粉や雌しべの機能の時間的変化を調査したところ,花が咲く前の昼間でも受粉が可能であると考えられました.そこで,現在は昼間と夜間にそれぞれ受粉を行い,十分な収量が得られるかどうかを検証しています.

 

・畜産廃棄物を利用した資源循環型果樹栽培方法の確立

 全国でも有数の畜産県である宮崎県は、大量に排出される家畜排泄物の処理が問題となっています。宮崎大学ではこれを有効利用するために、家畜排泄物からエネルギー(バイオガス)を獲得するプラントを建設し、学内で共同研究に取り組んでいます。その処理残さ(消化液といいます)は、植物の成長に有効な成分を多く含んでおり、肥料としての利用が期待されます。私たちは、これをマンゴーやミラクルフルーツなどの果樹に与え、肥料としての効果を検証し、資源循環型の新たな有機農法の確立を目指しています。

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