作物化学生態について研究しています


アレロパシー(他感作用)

 アレロパシー(Allelopathy)とは,ギリシャ語で「アレロ:allelo(お互いの)」と「パシー:pathy(身にふりかかるもの)」という意味の俗語として,1937年にオーストリアの学者であるハンス・モーリッシュ博士によって名付けられました。

 その後,日本では1977年に植物生態学者である沼田真博士により「他感作用(たかんさよう)」と名付けられました。

 アレロパシー(他感作用)は,ある植物から放出された天然の化学物質が他の植物に対して阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象を意味します(図1)。その場合の化学物質の名前を,他感物質(たかんぶっしつ)と呼びます。


1 アレロパシーの定義(他感物質による影響)
 これまでの研究から,いろいろな植物にアレロパシーの活性が見出されています。

 特に有名なのは,秋になると河川敷や空き地で2m以上も高く生長し,黄色い花を咲かせるセイタカアワダチソウです(写真1)。

 
             写真1 セイタカアワダチソウ


 このセイタカアワダチソウの茎や根から他感物質(cis-DME)が土壌中に放出され,そのために周りの植物が生育できないことが分かっています。

 また,アブラナ科のシロイヌナズナとタマネギを一緒に栽培すると,シロイヌナズナの他感物質によってタマネギが早く生育し,それにより通常よりも早く収穫できることも分かっています。

 私たちは,アレロパシーによって他の植物の生育を抑える作用に注目し,栽培している作物のアレロパシーで雑草を防除できるかどうかについて研究しています。これが実現すると,農薬(除草剤)の使用を減らして雑草を防除することができると考えています。