ATel に投稿しました
「自然が作り上げたものこそが美しい。我々はそこから発見するだけだ。」これは、“神の建築家”とも称されたアントニ・ガウディが遺した言葉です。 ガウディ亡き今、その真意を正確に知る者はいません。 しかし私は、この言葉を次のように解釈しました。――人類の科学的探求の本質は、「創ること」ではなく「見つけること」にあるのではないか、と。宇宙は、その本質が最も鮮明に現れる舞台です。 無数の銀河、星々、そしてブラックホール。 それらはすべて、人間が作り出したものではなく、自然が気の遠くなるような歳月をかけて築き上げてきた、壮大な営みの結晶です。私たちはそれらを「創造」するのではなく、ただ「発見」しているにすぎません。 けれど、その発見こそが人類の科学を飛躍的に進歩させてきたのです。 そこには、計り知れないロマンがあると思いませんか?さて、その“発見”をするために、私たち宮崎大学森研究室は、―― Xtend Tranent siSearch(XTS)というプロジェクトに参加しています。
XRISM 衛星外観図 ©JAXA
XTS は、X 線分光撮像衛星 XRISM(クリズム) に搭載された広視野 X 線撮像器 Xtend を用いて、 一過性(Transient)の X 線現象を探索する観測プログラムです。宇宙には、突如として明るく輝いたり、急激に変化する天体現象が数多く存在します。たとえば、ブラックホールに物質が吸い込まれる瞬間や、若い星がフレアを起こす様子など。それらはほんの短い時間しか観測できない「瞬間のドラマ」ともいえる現象です。XTS は、こうした一過性の X 線現象をいち早く検出し、 その情報を Astronomer’s Telegram(ATel) を通じて世界中の天文学者と共有します。 これにより、他の望遠鏡による可視光・赤外線・電波観測などが迅速に行われ、 より深い理解へとつながります。Xtend は非常に広い視野を持ち、一度に空の広大な範囲を観測することができます。 予測が困難な突発現象をとらえるのに最適な装置といえるでしょう。実際、XTS の観測によってこれまでに、 白色矮星の爆発的アウトバーストや若い星のフレア、 さらには未知の X線源の発見など、さまざまな成果が生まれています。そのうちの一つが、私の解析によって報告した ATel(番号 #17404「XRISM/Xtend TransientSearch (XTS) detected an X-ray flare from a T Tauri star CVSO 751」) です。CVSO 751 は、地球からおよそ 300 パーセク(約 1000 光年) 離れた「T タウリ型星」と呼ばれる若い星です。 こうした星はまだ進化の途中にあり、強い磁場活動を起こすことがよくあります。
今回のフレアは、2025 年 9 月 17 日朝(日本時間)ごろ に始まり、 約 1 時間後にピークを迎えたあと、ゆっくりと明るさが減っていきました。 明るさの減り方を表す「e-folding 時間」はおよそ 1.5×10⁴秒(約 4 時間)。 宇宙のスケールからすれば、ほんの一瞬の出来事です。
今回見られたフレアのライトカーブ(天体の明るさの変化を線でつないだグラフ)
ピーク時の明るさは、0.4〜2.0 keV の X 線で 6.5×10⁻¹² erg/s/cm²(誤差約 20%) に達し、 距離を考慮すると星全体の X 線光度は 約 7×10³¹ erg/s。 これは、太陽が通常放つ X 線の何千倍にも相当する強力なフレアでした。翌日の観測でも、同研究室の倉嶋順くんがまた別のフレアを観測し、ATel として報告しています。(番号 #17405 「XRISM/Xtend Transient Search (XTS) detected an X-ray flare possibly from a T Tauri star CVSO 209」)これらのフレアをとらえることができたのは、まさに Xtend の広い視野 があったからこそです。 若い星が見せるこうした爆発的な活動は、 星の磁場構造や、その周囲で形成されつつある惑星への影響を理解するうえで、重要な手がかりになります。今回の観測は、XRISM が持つ観測力――その「空を広く見渡す眼」の力を示すとともに、宇宙の「星の成長期」に迫る、貴重な一歩となりました。皆さんも、森研究室で XRISM を通して、宇宙の姿をみてみませんか?
(文責 岳本)