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研究紹介

1.嗅覚・フェロモン・味覚関連遺伝子の解析

 嗅覚は、餌を探し、外敵から逃れ、交配相手や子を認識するために使われ、動物にとって生きるために必須の感覚です。匂いの受容は、環境中の匂い分子が鼻の中にある匂いのセンサー、「嗅覚受容体」に結合することにより始まります。環境中に多様な匂い分子が存在することに対応して、嗅覚受容体の遺伝子は非常に数が多く、私たちヒトでは約400個、アフリカゾウでは約2000個にもなります(図)。
 それぞれの生物はそれぞれの生育環境に応じて、必要な嗅覚受容体遺伝子を進化させてきました。それぞれの生物がもつ嗅覚受容体遺伝子を調べることで、それぞれの生物がどのように匂いの世界を認識しているかを推定できるようになることが期待されます。
 同様の解析は、哺乳類だけでなく、鳥類、魚類、昆虫、線虫に対しても行っています。また、フェロモンや味覚(苦味)の受容体遺伝子についても解析しています。
 嗅覚関連遺伝子の解析は、ペットや家畜の餌に対する嗜好性、フェロモンを利用した繁殖の促進、害獣や害虫が忌避する匂いを利用した防御法や殺虫剤の開発など、広汎な応用が期待できます。

2.遺伝子の多型と環境要因との関連解析

 嗅覚受容体遺伝子は、個人差が大きいという特徴もあります。そこで、匂いの感じ方の違いと、嗅覚受容体遺伝子の多型との関連性を調べています。同様の解析手法を用いて、ゲノムの多型と個体のさまざまな形質との関連解析を行っています。

3.さまざまな生物のゲノム情報解析

 インド理科大学院、ガーナ大学、カルガリー大学など国内外の大学・研究機関と共同して、アジアゾウ、グラスカッター(ヨシネズミ)、カプチンモンキー、コウモリなど、さまざまな生物のゲノム情報の解析を行っています。

4.分子進化学の農学・獣医学分野への応用

 家畜の病気は、動物のゲノムとウイルス・寄生虫などの病原菌のゲノムとの相互作用ととらえることもできます。また、家畜や栽培植物のゲノムには人類が品種改良を行ってきた痕跡が残されており、進化的な視点に基づく解析が重要です。さまざまな生物のゲノム情報を用いて、分子進化学を農学や獣医学に応用する手法の開発を目指しています。

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