獣医機能生化学研究室


Laboratory of Veterinary Biochemistry and Molecular Biology

http://www.miyazaki-u.ac.jp/

・グルタル酸尿症II型の遺伝子治療に関する研究

<グルタル酸尿症II型とは>


国の指定難病です。


グルタル酸尿症II型(GAII)は複数部位のアシルCoA脱水素酵素が同時に障害される有機酸代謝異常です。Multiple acyl-CoA dehydrogenase deficiency (MAD)とも称されます。病因としてelectron transfer flavoprotein(ETF)遺伝子またはETF脱水素酵素(ETF-DH)遺伝子の異常が知られています。


この病気で最も問題になるのは脂肪の利用ができなくなることです。

通常、睡眠時などの空腹時には、エネルギーの極端な不足を防ぐために脂肪からエネルギーを作っています。この病気では脂肪の利用ができなるなることで心臓や筋肉、肝臓や腎臓など様々な臓器に障害がおき、症状としては、筋力低下、肝腫大、高アンモニア血症などを引き起こします。重篤な低血糖症によって脳がダメージを受けることもあります。


ETFおよびETF-DHに異常がある場合、その患者さんは新生児のうちにほとんどが亡くなられます。軽症型の報告は非常にまれで、患者さんの数は非常に少なく、その数は100人未満と考えられています。近年、新生児マススクリーニング研究の結果、31万人に1人の割合でこの病気を持った赤ちゃんが見つかっています。


この病気は遺伝性であり根治療法がありません。症状の悪化を防ぐためには飢餓状態にならないよう食事療法がとられています。

また、リボフラビン(ビタミンB2)とカルニチンの大量服用などで症状の改善が見られることがあります。


参考:難病情報センターHP </http://www.nanbyou.or.jp/entry/4819>

<当研究室の取り組み>


根治療法を目指した研究もほとんど行われていません。

またこれまで人以外の動物で人と同様にETF遺伝子またはETF-DH遺伝子の異常を原因とするグルタル酸尿症II型は動物で報告されていませんでした。


宮崎大学附属動物病院に原因不明の高アンモニア血症のネコちゃんが来院しました。検査をしてみると脂肪酸の代謝異常が認められました。


グルタル酸尿症II型が疑われましたので、原因遺伝子であるETF遺伝子とETF-DH遺伝子のmRNA配列を詳細に調べたところ、ETF-DH遺伝子に点突然変異を認めました。


人以外の動物で初めて確認されたグルタル酸尿症II型でした。

詳細を以下の論文で発表しています。

Wakitani S, Torisu S, Yoshino T, Hattanda K, Yamato O, Tasaki R, Fujita H, Nishino K.

“Multiple acyl-CoA dehydrogenation deficiency (glutaric aciduria type II)

with a novel mutation of electron transfer flavoprotein-dehydrogenase in a cat”.

JIMD Rep. 13: 43-51. 2014.

この患者ネコちゃんから採取した細胞に、正常なETF-DH遺伝子を

入れてあげることで脂肪酸の代謝異常が改善することを確かめました。


この細胞を患者ネコちゃんに移植すれば、病気が治るかもしれません。

現在我々の研究室では、遺伝子治療や細胞移植治療を駆使した

グルタル酸尿症II型の根治療法の開発を目指して研究しています。

研究内容 subject.html