研究概要

 食料自給率向上だけでなく,環境保全(Environmental Protection),持続的経済発展(Sustainable Economic Growth),エネルギー安全保障(Energy Security)の3Eを同時に実現する農業システムの構築を目的として,新エネルギーや高効率な栽培技術の開発について研究しています.現在は,植物工場のシステムや栽培技術,地域の未利用資源の有効活用に関する研究に取り組んでいます.


 農業は生物を対象とし,自然環境のもとで生産活動を行う非常に複雑多様なシステムです.そのため,農業における各種問題の解決には,多くの要素や条件を考慮した総合的な対応が不可欠です.そこで,物事を総合的に評価・判断・設計するシステムアプローチ,システム工学が有力な手段となります.農業を一つのシステムとして捉え,要素間の全体的連関を考察し,そのあり方を解明しようと研究に取り組んでいます.
 例えば,収量増産を課題とした場合に,施肥量のみを検討要因とするのではなく,光(強度,波長),温度(最高最低気温,平均気温,DIF),湿度,培地の種類,肥料(濃度,バランス),潅水量,収穫物の品質,生産コスト,環境負荷などの栽培環境要因を網羅的に把握することで,再現性を高め,実用性を担保することによって,はじめて普及・継承すべき技術として確立されます.

研究目標

・経験や勘だけに頼らないサイエンスに基づく農業技術の確立
・環境や生育のモニタリングと生育予測に基づく計画的・安定的生産技術の確立
・資源の有効効率を高め,環境と調和した農業技術の確立
・篤農家の技術の継承および栽培管理の自動化による農家後継者の育成

キーワード

植物工場,養液栽培,環境制御,LED,バイオマス,物質循環,土壌,肥料,野菜,エネルギー,太陽光発電,ソーラーシェアリング,営農型発電,スマートアグリ

研究テーマ

1.植物工場・養液栽培に適した栽培管理技術に関する研究
2.農地での食料とエネルギー生産を両立するハイブリッド農業に関する研究
3.農林畜産廃棄物利用による資源循環型農業システムの構築

1.植物工場・養液栽培に適した栽培管理技術に関する研究

 LED等の人工光源を用いた植物工場における栽培および運用管理技術の確立を目的とし,植物工場での養液栽培に適した作物の選定や栽培管理技術,収穫物の品質向上,植物工場のシステム構成,運用方法等について研究しています.2013年度末には宮崎大学内に研究用小型植物栽培システム(植物工場)が完成しました.

2.農地での食料とエネルギー生産を両立するハイブリッド農業に関する研究

 農地に高設型太陽光発電システムを設置し,その下で農作物を栽培するソーラーシェアリングにおいて,太陽光パネルによる遮光の影響,特に農作物の生育・収量に及ぼす影響および売電収入試算等を考慮した経済性に関して研究しています.2014年度には宮崎大学内にソーラーシェアリング研究圃場が完成しました.

3.農林畜産廃棄物利用による資源循環型農業システムの構築

 地域に存在する未利用資源の有効利用により,環境負荷低減や肥料コスト削減などにより環境と調和した農業システムの構築を目指しています.特に,未利用資源である家畜の排泄物や焼酎粕などをバイオガスプラントでメタン発酵処理し,発酵残渣として生じる消化液を液肥として活用する技術について研究しています.また,火山砕屑物を養液栽培の培地として活用する技術についても研究しています.

その他の研究紹介、卒論・修論紹介

・培養液調製用肥量計算ソフトの開発
・植物栽培用LED光源の開発
・土壌の理化学性の分析
・野菜中の硝酸態窒素やアスコルビン酸の分析
・培養液の成分組成の分析
・遺伝子工学的手法によるバイオ燃料の増産