近年の光情報通信を担っているものに光ファイバーがある。情報伝達速度が速くこれからも更に発展するものと期待されている。この電気/光或いは光/電気信号変換で大きな比重を占めるものが、半導体光電変換素子である。ガラスファイバーは、波長1.3或いは1.5ミクロン領域がもっともロスが少ないため。この領域での素子の開発が急がれる。このため、微量の窒素(N)元素を導入した希薄窒化物III-V化合物半導体量子デバイスを用いて光ファイバー用の半導体発光素子を開発している。この素子のように、最近では半導体ヘテロ接合薄膜を用いたLD(レーザーダイオード)やLED(発光ダイオード)の高輝度化の要求が高まっている。この様なデバイスにおいては、ナノメートル以下に達する超薄膜を用いることが重要であることがわかってきた。そこで、この発光効率を測定するための重要な実験手法として光吸収スペクトルの測定があるが、その膜の薄さのため事実上測定が不可能であった。また表面光起電力の測定についても有効な情報が得られていない。他にもフォトルミネセンス(PL)法や、フォトリフレクタンス(PR)法があるが、何れも吸収の閥値はわかるものの、スペクトルの形状、即ち電子状態密度はわからなかった。
そこで、我々が開発した光熱変換分光法(PPTS)や、表面光起電力分光法(SPVS)を用いて、膜厚半導体デバイス構造の光吸収スペクトルを測定できた。図にはGaInNAs構造LEDで3〜10nmの超薄膜に対して得られたものである。量子力学の教科書でしか見られないような状態密度を反映した光吸収スペクトルを測定することに成功した。このため励起子吸収成分の分離が可能になり、これまで出来なかった励起子結合エネルギーの議論を行うことが出来た。超薄膜でスペクトルをこの様に正確に測定できたのは世界で初めてであり、PPTS法やSPVS法が極めて有効な実験手法となる事を示すことが出来た。
(米国物理学会誌APL、応用物理学会欧文誌JJAP、欧州材料学会シンポジウムEMRS2004、米国半導体デバイスシンポジウムISDRS2003などで発表)