人間工学入門 入門編(3)


V.作業姿勢

1.姿勢の種類

  1)生活姿勢       : 日常生活における色々な姿勢

  2)生活姿勢の基本パターン: 立位、平座位、椅座位、臥位(ガイ)の4種類

                    ↓↓↓

                  細分化:48種類

     例:立位(7種類) ⇒  直立、歩行、腕前上、腕前下、前よりかかり、

                  後ろよりかかり、中腰

   3)仕事の作業姿勢と評価  (  作業姿勢と評価方法の例 )
                          : Webを利用した作業姿勢負担評価システムの体験  


2.姿勢の決定条件

  1)視覚を中心とする場合   : 目からの距離、目の位置高さ

  2)循環を中心とする場合   : 心臓より上、下

  3)手足の運動を中心とする場合: 手指作業

                  上肢全体(ショベル作業、ツルハシ作業)

                  下肢運動(運搬作業)

                  肘関節、肩関節

                  股、膝関節のどの部分が中心かを考慮

  4)身体の重心を中心とする場合:

       平衡のとれた安定した姿勢を保つには重心が問題になる。

         例:荷重の持ち上げなど 身体の重心の計測・評価方法の例
                           
 :研究事例を紹介する  


3.作業姿勢と身体的負担(作業後の心身の変化)

 (1)生体負担     

  心理的な拘束、圧迫、苦痛、生理的変化(発汗、体重の減少)を含めて生体

   負担と呼ばれている

  1)主観的指標: 主観的な体験として心に感じとらえるもの。  

  2)客観的指標: 態度とか行動とかにより外に示されるもの。

  3)生理的指標: 生体的機能の変動として外から調べることができるもの。

    a.自覚的疲労症状、身体疲労部位調査で把握可能。

    b.質、量の生産量や能率で測定可能。

    c.エネルギー代謝率、呼吸量、脈拍数、筋電図、フリッカー値、眼球運動、

      脳波などで測定される。


 

 (2)生理的疲労の測定方法

  1)エネルギー代謝率 (Relative Metabolic Rate:略称:R.M.R.)

エネルギー代謝量(R.M.R.)= 労働代謝量/基礎代謝量

                      (全代謝量−基礎代謝量×1.2)/基礎代謝量
労働代謝量    : (作業時の酸素消費量−安静時の酸素消費量)で求める。

安静代謝量   :  安静時の酸素消費量
基礎代謝量    : 人間が生きているために必要な最小酸素消費量
エネルギー代謝量 : 労働強度、作業強度と呼ぶこともある。

  
( 資料 3-0   

1. 基礎代謝量(きそたいしゃ)(Basal Metabolic Rate ; BMR)
 何もせずじっとしていても、生命活動を維持するために生体で自動的に(生理的に)行われている活動で必要なエネルギーのこと。相当するエネルギー量(熱量)は、成長期が終了して代謝が安定した一般成人で、一日に女性で約1,200、男性で約1,500キロカロリー(kcal)とされている。

 測定には食後12?14時経過してから、室温20-25℃の環境下で覚醒状態で仰臥位を保持させる。このときの酸素摂取量をダグラスバック法によって測定する。基礎代謝量は、ヒトが生きていく上で最小限必要な消費エネルギーと考えられるので、これには消化、吸収、及び運動に用いられるエネルギーは含まない


2. 安静時代謝量(resting metabolic rate)
 坐位における基礎代謝量であり,BMRの1-2割増しである.運動とは直接関係のない代謝量であるが、運動するための準備状態における代謝量である。すなわち運動するには、基礎代謝量の状態においてするのではなく、身体の状態も環境も異なるのであるから、基礎代謝の上に、さらにある代謝量が追加されなければならない。この追加される代謝量が安静代謝量である。

3. 労働代謝量
 労働中の消費熱量のことで、安静時代謝量の上に、労働のために消費した熱量を含んだ量である。そこで労働の種類は、千差万別でこれらの労働を同一強度とみなすことはできない。し たがって生理的にいえば、労働に必要なエネルギー量で労働強度をあらわすのが妥当であろうが、しかし実測してみると同一労働を同一条件で行っても、身長の大小、体重の軽重によりエネルギー消費量が異なる。そこで個人差、季節差等に左右されない生理的労働強度をあらわすのに、エネルギー代謝率(R.M.R.:Relative Metabolic Rate)が用いられている。


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 ( 課題3: 基礎代謝量は、だいたいその人の体表面積に比例し、
       男女、年齢によっても差がある。各自の基礎代謝量を算出する。)


         基礎代謝基準値kcal/kg体重/)のデータ表 

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   労働程度(評価)のR.M.R.基準は以下の通りとなっている。

RMR 0〜1    : 極軽作業
RMR 1〜2    : 軽作業
RMR 2〜4    : 中作業
RMR 4〜7    : 重作業
RMR 7〜     : 激作業 :機械化した方が良い。
RMR 10以上    :  絶対機械化すべきものである。


 2) 活動代謝(Ea)

  近年、活動時のエネルギー消費量の計算には活動代謝(Ea)を用いる事がある。

  1日エネルギー消費量(A)= Bm Tb W + 忍a Tw W

    Bm: 体重当たり基礎代謝値   Tb : 就床時間(分)

    W : 体重 (Kg)        Tw : 各種の活動時間(分)

  Ea : 各種活動時の体重当たり毎分エネルギー消費量(cal/Kg/分)

    
( 資料 3-1)
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    ( 課題4: 昨日の各自の1日エネルギー消費量(活動代謝(Ea))を算出する。
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 活動代謝(Ea)とは、日常生活の中で活動を行ったときの体重1kgあたりの1分間の消費エネルギーのことである。この代謝量は活動のみに要したエネルギーの他、基礎代謝や特異動的作用なども含まれ、その活動を行っている全エネルギー代謝を意味する。



 3) 心拍数 (Pulse Rate, Heart Rate)

  a.  簡易計測法:  4〜5分間の平均心拍数を毎分当たりに換算。

             変化状態は15秒間隔に測定する。

  b. 心電図(Cardio Tachograph, CTG) :

  
      11. 心拍数計測解析を参照 )


 4) 筋電図(Electromyogram, EMG) :

  a. 表面電極法:

  b. 針電極法:

   ( 12 筋電図計測解析を参照 )


 (3)姿勢と筋活動  

   特殊な作業姿勢や不自然な作業姿勢による重量物運搬、農作業、狭い空間での

   労働は酸素消費や筋肉に与える負担が大きく、疲労を招く。

   作業姿勢の問題は人間工学においても大きな課題である。  
 

1)姿勢と筋活動度の測定 ( 図 3-2
  測定筋肉の位置: 21種
  測定法 : 筋電計を使い、全筋肉の活動度の総計点を求める。
       立位緊張時を100として、各姿勢の総計点を求める。
       寝姿勢が一番楽である。   
2)重労働と腰曲がり 図3.3
  港湾労働者、建設労働者、林業労働者、農業従事者の作業姿勢と腰痛問題

   は密接な関係がある。
     農業労働 ⇒ 特殊な作業姿勢が残存する。
             ↓↓
           腰痛、腰曲がり、頸肩腕症候群  
3)運搬方法と負荷度  ( 図 3-3 )   
  a.運搬法とRMR
     RMR 10 以上の運搬は機械化が必要。   
  b.女子の適性限界重量  ( 図 3-4 )
     女子の運搬は15〜20Kg以下にすべきである。
       日本の労働基準法
         18歳以上の女子: 断続作業30kg   継続作業20Kg
         許可申請の場合: 25Kg    15Kg
         16歳未満    : 12Kg    8Kg

 
 V.労働環境に関する人間工学的評価解析方法       
  


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(安全性・快適性・疲労の計測・解析・評価方法・指標)
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1)騒音の計測・解析・評価
2)粉塵の計測・解析・評価
3)作業姿勢の計測・解析・評価
4)心拍の計測・解析・評価
5)全身振動の計測・解析・評価
6)手腕振動系の計測・解析・評価
7)温熱環境の計測・解析・評価
8)筋電図の計測・解析・評価
9)疲労部位調査
10) 主観的評価(RPE)
11) 脳波の計測・解析・評価
12) RMRの計測・解析・評価
13)レーダーチャート式快適性評価(生研機構)
14) その他 多数の計測・解析・評価方法有り

  (例:視覚・聴覚・味覚・触覚  
     色 照度 各種テスト 反応速度 重心揺動・・・)

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