歩行中の乳牛に対するBCS評価の自動化
実験背景・目的
年々乳用牛の飼養戸数が減少している反面、一戸当たりの飼養頭数は増加しています。農場業務の自動化が普及していないものの一つにBody Condition Score(BCS)の評価があります。目視と触診による評価方法が用いられており、これを管理することは畜産農家の方に大きな負担となります。自動化技術が普及していない領域の技術開発を行うことで、労働負担の軽減や経営の効率化を後押しすることを目的としています。
BCSとは、乳牛の体脂肪蓄積度を評価する指標であり、1〜5の5段階で評価されます。この値は牛の栄養状態や健康状態を示す重要な指標ですが、従来は熟練した技術者による目視と触診で評価されており、主観的で時間がかかるという課題がありました。
研究手法
上の図に示すように、3Dカメラを用いて牛の背中を撮影し、得られたデータをExcelに記録します。その後、乳牛の歩行データから前処理として牛領域の抽出を行い、BCS評価のための特徴(背骨ライン、腰骨ライン、交点など)を抽出します。最後に、BCS推定モデルを用いてBCSを評価します。
具体的な研究手法は以下の通りです:
- 3Dカメラを用いた牛の歩行データの収集
- 画像処理技術による牛領域の抽出と背景除去
- 牛の体型に関する特徴量(背骨の曲線、腰角の突出度、尾根部の凹み等)の抽出
- 機械学習モデルを用いたBCS値の推定
- 専門家による評価との比較検証
右側の表は実験結果の一例で、5頭の牛に対するBCS評価値を示しています。牛番号1から5までのBCS値はそれぞれ2
実験結果
現在までの研究では、3Dカメラから得られる深度情報を活用することで、牛の体型特徴を正確に捉え、BCSを高精度で推定できることが確認されています。特に、歩行中の牛に対しても安定した評価が可能であり、実用性の高いシステムの構築に成功しています。
今後は、より多様な環境や牛種に対応できるよう、データセットの拡充とモデルの改良を進めていきます。また、BCSだけでなく、跛行検知や発情検知など、他の健康指標との統合も視野に入れ、総合的な牛の健康管理システムの開発を目指しています。さらに、クラウドシステムとの連携により、複数の農場からのデータを集約・分析することで、より高度な飼養管理支援システムの構築も検討しています。
価値と効果
BCSは給餌量や泌乳量など飼料効率と密接に関係しています。また牛が極端な体型で過ごすことは多くのリスクがあります。BCS評価の自動化技術を開発することで農家の方に大きな負担を強いることなく、牛群の健康管理や効率的な農場経営を支援します。
具体的には、以下のような効果が期待されます:
- 労働時間の削減と効率化
- 客観的かつ一貫性のある評価の実現
- 定期的なモニタリングによる早期の異常検知
- データに基づいた飼養管理の最適化
- 生産性の向上と経済的損失の低減
