プライバシーを保護した高齢者見守りと健康支援システム

研究背景・目的
日本の高齢化問題と介護職員不足は深刻化しています。2023年時点で介護職員数が厚生労働省の定める必要数より不足しており、2040年までに65万人の介護職員増員が必要とされていますが、現状の推び値では達成が困難と予測されています。また、介護サービスの質の低下や利用者の待ち時間増加、介護職員の負担増加も問題となっており、特に身体的負担が51.5%と最も多く報告されています。
本研究では、画像処理技術とAIを活用した効率的な高齢者見守りシステムの開発により、24時間人手に頼らず高齢者の見守りを可能にし、プライバシーを保護しながら健康状態の変化や異常を早期に検知することを目的としています。
システムの概要
本研究の取り組みと目指す未来を示しています。現状の課題(介護職員の負担増加、待機高齢者増加、介護サービス質の低下、高齢者虐待)に対して、本研究では以下の4つの要素からなる見守りシステムを提案しています:
- 通知:遠隔確認可能な行動履歴/待機システム
- 撮影:深度カメラによるプライバシーを保護した撮影
- 推定:蓄積データからの患者の待機を促進
- 特徴抽出:画像から特徴を抽出
これにより、負担軽減と業務効率化、健康問題の早期発見、プライバシーの守られた生活、緊急事態への対応といった未来を目指しています。
先端技術の活用
本研究では、以下の先端技術を活用して高齢者見守りシステムを実現しています:
- 画像処理技術とAI:効率的な見守りシステムの構築に活用し、24時間人手に頼らずプライバシーを保護
- 深度カメラ:RGB画像ではなく深度情報を用いることで、プライバシーを保護しながら行動パターンを分析
- 行動認識アルゴリズム:転倒や異常行動などの緊急事態を自動検知
- データ分析:蓄積された行動データから健康状態の変化や異常を早期に検知
見守りシステムの効果
本研究で開発している見守りシステムは、病院や高齢者施設、在宅医療・介護の質向上に貢献します。具体的には以下の効果が期待されます:
- 介護職員の身体的・精神的負担の軽減
- 24時間の安全な見守りによる事故防止
- 異常行動の早期検知による迅速な対応
- プライバシーを保護した尊厳ある介護の実現
- データに基づく個別化された介護計画の策定
- 介護職員の業務効率化による人手不足問題の緩和
社会的意義と今後の展望
本研究は、持続可能な福祉ケアの実現と、地域社会全体の健康水準の向上に貢献し、「人生100年時代」に向けた社会全体での予防・健康づくりの取り組みを支援します。SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標8(働きがいも経済成長も)、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)、目標11(住み続けられるまちづくりを)に貢献することを目指しています。
今後の展望としては、より多様な環境での実証実験を行い、システムの精度と信頼性の向上を図るとともに、介護施設や在宅介護の現場での実用化を進めていきます。また、他の健康モニタリングシステムとの連携や、AIによる予測機能の強化なども検討しています。