情報技術とAIを用いた臍帯血ガスパラメータ活用による負担軽減型胎児モニタリング

解決する課題と価値・効果

胎児心拍数変動(FHRV)の解析において、データに含まれるノイズや外れ値による精度低下、リアルタイム解析の不足、さらにFHRVと臍帯血ガスパラメータとの関連性が未解明であるという技術的課題を解決することを目的としています。

医療従事者が使いやすい胎児モニタリングシステムを開発し、複雑な生理データをわかりやすく提供することで、迅速かつ的確な意思決定を支援します。これにより低酸素症やアシドーシスの早期発見と適切な医療介入が可能となり、母子の予後改善に寄与します。

システムの概要

システムの概要

上の図に示すように、本システムは胎児心拍変動(FHRV)のデータを頭皮用電極から取得し、処理PCで分析します。学習モデルにより、出産時の臍帯血ガス分析によってしか得られないパラメータ(pH、PCO2、PO2、HCO3、BE)を予測します。

これらのパラメータは胎児の呼吸状態を評価し、潜在的な合併症を発見するために重要です。心電図と各パラメータとの関係性を鑑みたモデルを構築することで、胎児の状態をリアルタイムで推定することが可能になります。

システムの下部に示されているように、出産前からpH、PCO2、PO2、HCO3、BEがわかることにより、出産に伴うリスクや緊急事態に対する事前準備が向上します。また、データがリアルタイムで処理され、結果が即時に利用できるため、医師や医療スタッフは迅速かつ適切な意思決定を行えます。

研究手法

胎児に頭皮用電極を装着し、胎児の心拍変動データを取得します。その後、心電図と各パラメータ(pH、pCO2、pO2、HCO3、BE)との関係性を鑑みたモデルを構築し、胎児の状態を推定します。

具体的には、以下のステップで研究を進めています:

  1. 胎児心拍数データの収集と前処理(ノイズ除去、外れ値処理)
  2. 心拍変動パラメータの抽出(時間領域、周波数領域、非線形解析)
  3. 臍帯血ガスパラメータとの相関分析
  4. 機械学習モデルによる胎児状態推定アルゴリズムの開発
  5. リアルタイム解析システムの構築
  6. 臨床評価と改良

研究成果と今後の展望

現在までの研究で、胎児心拍数変動と臍帯血ガスパラメータの間に有意な相関関係を見出しており、機械学習モデルによる胎児状態の推定精度も向上しています。特に、エントロピー指標を用いた解析が胎児の低酸素状態の早期検出に有効であることが示唆されています。

今後は、より多くの臨床データを収集し、モデルの精度向上を図るとともに、医療現場で実際に使用可能なリアルタイムモニタリングシステムの開発を進めていきます。また、デジタルツイン技術を活用した胎児の生理状態シミュレーションも検討しており、より包括的な胎児健康管理システムの構築を目指しています。

本研究は、高齢出産と低出生率のシナジーの克服を促進し、SDGsの目標3(すべての人に健康と福祉を)、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)、目標10(人や国の不平等をなくそう)に貢献することを目指しています。また、技術革新により、医療アクセスの向上にも貢献します。