天の川銀河中心領域に関する国際会議に参加しました in チェコ
羽田からおよそ 15 時間の ANA 直行便にて辿り着いた先は、オーストリアのウィーン。予備知識なしで来たので、音楽の街というくらいしか知らなかったが、例えばウインナーコーヒーは「ウィーン風の」コーヒーという意味のようで、カフェ文化のレベルも高いようだ。早朝に到着し、早速カフェに入ったが、残念ながらクリームがトッピングされていそうなコーヒーは見当たらず。ただカプチーノは絶品。以前ドイツの知り合いに「古代エジプトが好きなんだよねー」と話したら教えてくれた、おすすめの美術館がウィーンにあるということで、次に向かった先は「Kunsthistorisches Museum」(美術史博物館)。まずメインホールの壁や天井の装飾があまりに凄い。メインの展示は中世の絵画かもしれないが、古代エジプトやメソポタミア、ギリシャの展示も目を見張るレベルであり、特に古代エジプト王朝の初期、紀元前 2500 年ほどの遺物をたくさん収めているのが貴重であった。ちなみに絵画の展示はレンブラントやルーベンス、バベルの塔で有名なブリューゲルなどを並べており、言うまでもなく荘厳であった。
美術史博物館の展示品とメインホールの装飾
さて、会議自体はお隣のチェコ共和国で開催されたが、使いやすい国際空港はウィーンとのことで、こちらに到着したわけである。会場があるのは Brno(ブルノ)という、チェコ第二の都市。電車でおよそ 2 時間、到着したのは赤い屋根の住宅街が特徴的な、綺麗な街であった。バスやトラムが頻繁に走っている。会場は「Brno Observatory and Planetarium」と聞いていたが、本当にプラネタリウムで研究会をやっているのには驚いた。プラネタリウムの片隅にスライドを写し、あのプラネタリウム特有のエコーの全くない音響に繋いだマイクでプレゼンをする。みんな寝てしまうんじゃないか...という感じがしたが、なかなか活発な議論が行われていた。私自身は XRISM 衛星による超新星残骸「いて座 A イースト」の分光観測の結果と、それを元にした銀河中心の巨大ブラックホール「いて座Aスター」の数千年前の活動の考察について講演を行った。銀河中心領域を専門とする研究者が集う研究会というものに参加したのは初めてであったが、やはり天の川銀河の「都心」とも言うべき中心部には話題が尽きず、観測と理論・シミュレーション、観測といっても電波からガンマ線、重力波やニュートリノと、宇宙物理の広範なテーマを含んでいた。日本からの参加者は案外多く、会議参加者およそ 200 名に対して 20 名弱が日本人であった。我々の研究室が専門とする X 線観測分野も、歴史的にも銀河中心の研究の発展に大きく貢献しており、XRISMを使ってさらに成果を出していきたいところである。銀河中心から届く X 線は強い吸収を受け、その程度はエネルギーが低いほど強いため、高エネルギー側に高い感度がある XRISMと相性が良い観測ターゲットの一つである。
ブルノの街並み
会場とプラネタリウムでの講演の風景、集合写真
ブルノという街は大部分の場所になんとか歩いて行けるくらいのサイズ感であるが、1000年前からある大聖堂や中世のお城があったり、中世や近代の広い地下道があったりと、趣深い街であった。街のシンボルである聖ペテロ聖パウロ大聖堂は 11 世紀にロマネスク様式で建てられたのち、天井が高く窓が大きいゴシック様式で改築された。内装はシンプルであるが、ところどころ金色のきらびやかな装飾が見られ、さらに後世の改築が伺える。特徴的な高く尖った塔は 20 世紀に新しく建てられたものだそうだ。 地下道は中世のワインや食材の保管庫、錬金術師の実験室、拷問部屋、カタコンベ、と非常にバラエティ豊かであったが、印象的だったのは冷戦時代の核シェルターである。映画に出てきそうな細い地下道にガスマスクがたくさんかかっている。緊急時にはおよそ 500 人を 3 日間避難させることができたそうだ。発電機、酸素を供給する機器、通信機器、レストランなどが当時と変わらぬ姿で残されている。 研究会というのはこういう、観光目的では行かないだろうな〜という土地を訪れることも醍醐味の一つであり、こういうことができるのは研究者という職業ならではである。当然、あくまで会議の “空き時間” に観光をするのであって、決してサボって遊ぶわけではないとに注意されたい。 (文責:鈴木)
聖ペテロ聖パウロ大聖堂
地下道の風景