Research

熱電変換材料

 「熱」は、得やすいクリーンエネルギーであると同時に太陽電池といった半導体デバイスにとっては変換効率や出力の大きな損失となります。今後様々な分野で省エネ対策が求められるため、身近な熱マネージメントは今後ニーズが高まると予測できます。環境排熱の観点から特に、熱を電気に直接変換する熱電発電が注目されています。

 具体的な例として、日本における排熱量だけでも原子力発電所20~45基分に相当します。このうち10%を電気エネルギーに変換する事ができれば、日本から原子力発電所が2~4基不要になり、熱エネルギーのポテンシャルを実感できます。本研究室では、熱電発電を社会に普及させるために、高効率で環境調和した熱電材料の開発に取り組んでいます。独自の結晶成長技術を用いて、環境調和した元素から構成される材料であるCu2ZnSnS4(CZTS)単結晶が500 ºCの環境下で世界最高の熱電性能を達成しています。材料工学に基づき、様々な元素の組合せから高効率な熱電材料の探索とデバイス開発を日々行っています。

太陽電池材料

 現在2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、太陽光発電が非常に大きな役割を担っています。現在主流の太陽電池はシリコンを使って作られていますが、シリコンは間接遷移型半導体であるために光を吸収能力が小さく、太陽光を全て吸収するためには厚いシリコンを用いなければなりません。このため太陽電池パネルを作るには、たくさんのシリコンを必要とし、重い、原料コストがかかり価格が高くなる、などの課題があります。

 本研究室では、シリコンに代わる高効率な太陽電池材料の開発に取り組んでいます。特にCu(In1-xGax)Se2 (CIGS)、Cu2ZnSn(S1-xSex)4 (CZTSSe)やCdTeの材料に注目しています。これらの材料は、シリコンよりも10~100倍の光吸収能力があるため、低コスト・高効率が実現でき実用化もされています。しかしながら、これらの材料において、更なる高効率のために必要な半導体制御技術に関する未解明な問題が存在します。高効率・高品質な太陽電池材料をワークピースとして、徹底的な基礎研究からこれらの問題にアプローチしています。

放射線検出材料

 福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、安全かつ着実に遂行するためには、人間の目に見えない放射線を短時間で高感度に検出するセンサーの開発が求められます。テルル化カドミウム (CdTe)は、1950年代からアメリカを中心に研究が続けられている有望な放射線検出センサー材料です。

 本研究室では、独自の単結晶成長技術により、今までよりも欠陥の少ない高品質なCdTe単結晶を用いた短時間で高感度な放射線検出器の開発を行っています。放射線の検出感度が高い事は廃炉へも貢献出来ますが、医療分野においてもレントゲン撮影時に使用するX線の線量を下げることができ、さらに短時間に測定でき、患者の被ばくを低減する事が可能になります。