インプラントの生体力学的適合性

Implant biomechanics

 

 人工関節や骨接合材などの体内に設置するインプラントでは,「骨と“如何にくっつけるのか”が重要である」とわかっているにも関わらず,いまだに「インプラントのゆるみ・破損」や「骨折」など術後の不具合が報告されています.特に高齢者の場合,再手術は負担が大きく難しいことから,臨床現場ではインプラントの機能強化と耐用年数の向上(長く使える)が強く求められています.

 我々はインプラントと骨との間における力学的な相互作用を実験とシミュレーションを駆使し解析することによって,「生体または患者に最適な形状・材質を備えたインプラントの提案」と「術前計画・術中ナビゲーションシステム・手術ロボットと連動して患者個々にインプラントを至適設置するシステムの確立」に取り組んでいます.

 

人工股関節 / hip implant

 

 人工股関節置換術の術後にインプラント周囲の骨がどのように変化するのか術後10年までシミュレーションしています(J Biomech. 2017,科研費 基盤研究C).骨の一部が徐々に少なくなっていく様子がわかると思います(右下図).インプラント周囲の骨が吸収されると支えることが難しくなり,再手術が必要になります.そこで,整形外科医,医療機器メーカーと共に,骨量減少を抑えるインプラントの開発に取り組んでいます.

 

 

 ある患者さんの術後10年までの骨密度の変化を予測しています.インプラント周囲の寒色部分は骨密度が減少していくことを表しています.これをストレスシールディングと言い,インプラントがゆるむ原因になります.一方,インプラントの遠位端では骨密度が増加(暖色部分)していますが,これは大腿骨近位部のストレスシールディング(応力遮蔽)によって遠位部での荷重伝達が促された結果と考えられています.グラフはインプラントの固定に重要な近位内側部の骨密度変化を示しています.

 

 

半月板インプラント / meniscus implant

 

 加齢変性やスポーツによって半月板を大きく損傷した場合の有効な治療は切除術しかありません.本研究では,半月板損傷後に進行する変形性膝関節症を防ぐために,軟骨を守る非吸収性の半月板インプラントを開発しています.膝関節の有限要素解析シミュレーションと生体力学実験を駆使しインプラントの荷重分散性,関節安定性を指標としたデザインの最適化を図り,製作しています.また,膝関節モデルを用いて手術方法・器械の開発も取り組んでいます.

骨疾患のバイオメカニクス研究

Bone Bioemechanics

 

 

非定型大腿骨骨折のリスクを予測する / Atypical femoral fracture

 

 人口の急速な高齢化に伴い骨粗鬆症の患者が増加しその数は1300万人とも言われている状況の中で,転倒などの明確な外傷のない骨折(非定型骨折)が増加しています.近年,大腿骨に生じる非定型骨折の原因は,骨粗鬆症の治療薬(ビスフォスフォネート製剤)の影響や大腿骨のわん曲に起因したマイクロダメージ(微小な損傷)の蓄積であると指摘されていますが.その力学的な根拠は明らかにされていません.またレントゲンやCTによる画像所見だけではこの骨折を起こす危険性を判断することは難しいと言われています.

 そこで我々は,非定型骨折の発症メカニズムを解明するため生体力学の観点から解明を試みると同時に,骨折リスクを予測するシミュレーション技術の確立を目指しています.

 

非定型骨折患者のCT画像データを利用して患者個別の有限要素モデルを構築しています.骨折患者には特異的な構造的脆弱性を示しています(図中の大腿骨の赤い部分).

 

大腿骨頭壊死症の骨切り術の生体力学的効果

 

under construction

スポーツのバイオメカニクス

sports biomechanics

 

 スポーツにおける体の使い過ぎ(オーバーユーズ)や誤ったトレーニングなどを原因とした怪我や障害(スポーツ障害)がアスリートや大人だけでなく,成長期の子供においても問題になっています.スポーツ障害を防ぎ,パフォーマンスを向上させるためには,スポーツ動作を詳しく分析し,そのメカニズムを明らかにすることが必要になります.

 我々はモーションキャプチャシステムと筋骨格シミュレーションを駆使することによって種々のスポーツ動作を解析するシステムを開発し,怪我を防ぎ,パフォーマンスを向上するための知見獲得を目指しています.そして,生涯に亘ってスポーツを気軽に楽しむ社会を構築し「健康寿命の延伸」に貢献したいと考えています.

 

 

野球 / baseball

 

 慣性センサを使った野球打撃の新しい計測法を開発しました.(J Biomech. 2019, Sensors 2020, 2021)

 

 

 野球のオーバスローとアンダースローの投球メカニクスを筋骨格シミュレーションによって解析し,関節力や筋力を計算することによって怪我の発生リスクを予測しています.

 

 

 

カヌー競技 / canoe

 

under construction

ロコモのバイオメカニクス

biomechanics on locomotive syndrome

 

 ロコモティブシンドローム(ロコモ)はご存知ですか? 詳しくはこちら
ロコモとは変形性関節症,骨粗鬆症,骨折,サルコペニアなどの運動器の障害によって筋力,バランス能力等を失い移動機能(歩く,立つ)の低下をきたした状態として定められています.ロコモが進行すると介護が必要になり自立した生活を送ることが難しくなることから,高齢社会の日本で質の高い生活を実現するためにロコモを防ぐことが社会的に求められています.ロコモの予防には移動機能を回復・維持・向上させることが必要であることからロコモの状態を簡単に定量評価するバイオメカニクス研究に取り組んでいます..

 

ロコスタ! / locomo stand-up!

 

 日常生活動作の中でも最も力学的負荷の大きい「椅子から立ち上がる動作」に着目したロコモの評価方法を開発しました(特許第6281876号,PLoS ONE 2017, ISPRM 2018).立ち上がるときのスピードとバランス(重心移動)を組み合わせた新たな指標「STSスコア」を考案しています.これまで500名を超えるデータからSTSスコアは加齢に伴う運動機能の低下を検出できることを明らかにしました.

 また,STSスコアを用いることによって「ロコモ年齢」を簡単に調べることができます.実年齢よりもロコモ年齢が高い場合注意が必要になります.

足元に設置した「フォースボード」から荷重と重心移動を計測することによって立ち上がり動作を定量化し,ロコモの状態を評価しています.

 

ロコボット®️ / locobot®️

 

under construction

研究設備

Facilities

 

ハード

  • 生体用2軸疲労試験機(ElectroPlus e10000,インストロン)
  • 中型材料試験機(AG-X plus 20kN,島津製作所)
  • 小型材料試験機(AGS-X 10kN,島津製作所)
  • 光学式3次元計測システム(Polaris spectra,NDI)
  • フォースプレート(9260AA6,KISTLER)
  • 3Dプリンタ(Form3,formlabs)
  • 手動射出成形機(INARI,ORIGINALMIND)
  • 球体ロボット(BOLT, SPRK+,SPHERO)

ソフト

  • ABAQUS
  • MARC
  • SolidWorks
  • Mimics
  • Rhinoceros
  • Anybody modeling system
  • MATLAB
  • LabVIEW

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