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研究内容

2009/1/20

最近南日本で報告され、日向灘で普通に繁殖が行われていると思われるクロボシヒラアジ


クロボシヒラアジAlepes djedaba (Forsskal, 1775) 体長約15 cm    宮崎市内のスーパマーケットにて
宮崎県庵川産 和田正昭 氏寄贈標本 
MUFS 26468 泉 光・香林亮運 撮影


 本種は、最初1995年2月1日に志布志湾串間漁協の小型定置網に入網した漁獲物の中から気づいた。体長は167 mmであった。それ以前では全く宮崎県や我が国の水域からも報告されていない種類であった。 その年の7月にまた2個体の標本(体長175-177 mm)を同じ志布志湾から入手した。しかしながら、1995年においては、日南海岸南郷町目井津漁協や、宮崎県北部の延岡湾では全く漁獲されていなかった。

翌年の1997年には、多くはないが日南海岸の目井津漁協で、時折数尾程度漁獲されていたが、大量には漁獲されていなかった。1998年になると宮崎県内一円の漁協で定置網等に入網しているのが観察され、全長も30cmを超えるものがちらほらみられるようになった。現在、2008年では、数センチメートルの稚魚から全長30cm超える大型のものが、県内のどこでも見られるようになっています。宮崎県では、上の右側のように平エバとしてスーパーで普通に売られるようになっています。ちなみに1尾97円で、刺身も身が引き締まっていて、普通のマアジよりも美味しい魚と思うので、非常にお買い得の魚です。


本種は、インド・西部太平洋に広く分布することがしられ、昔から海南島付近の中国南部では非常に多く見られていたが、北上して日本にやってきた可能性が高い種類と思われます。

 従来日本に生息していなかった魚類が、数年の内に急にみられるようになったのは、冬期の最低水温がやはり上がったため、日向灘で冬を越えれるようになった可能性が大きいと判断しています。今社会問題となってきた温暖化の影響と即断するのは憚れるが、他の南方魚類も日向灘で急に見られ出したことを考えると、日向灘の魚類資源への温暖化の影響を調べる必要性が出てきたと考えています。


●本種の特徴

宮崎県の志布志湾に面した串間地先の小型定置網から3個体のAlepes djedabaが採集された.本種の出現は,日本沿岸水域からは,初めての記録であり,本種の最北限の記録になる.本種は,鰓蓋骨上部に明瞭な黒斑を持つこと,楯鱗が第2背鰭第13番目の軟条下から始まること,楯鱗数が少ないこと(44-45枚)および上顎歯が1列であることなどから,同属他種と区別される.


文献
  • Iwatsuki, Y. and S. Kimura. 1996.2. First Record of the Carangid Fish, Alepes djedaba (Forsskal) from Japanese Waters. Ichthyol. Res., 43(1): 182-185.


 
 
 
 
宮崎大学農学部 宮崎大学農学部生物環境科学科 水産科学講座