井口 純(いぐち あつし)
● ゲノム情報を積極的に利用した細菌学研究
患者や環境から分離される菌株のゲノムを同種(または近縁種)に属する株間で比較してみると、いろいろな“ 違い” が見えてきます。例えば、病原細菌が持つ注目すべき病原関連遺伝子の多くはファージやプラスミド、トランスポゾンといった“ 動く遺伝子” により他の細菌から運ばれてきたことが分かります。また、表層多糖や線毛、鞭毛といった菌体表層に発現する構造体をコードする遺伝子(領域)が株間で非常に多様化していることが分かります。
我々の研究室では本学医学部微生物学教室(およびフロンティア科学実験総合センター)にサポートしていただきながら標的細菌のゲノム解析を積極的に行っており、そこから得られた情報(ゲノムの相違)を利用して「詳細な系統分類」「病原関連遺伝子の探索」「遺伝子タイピングツールの開発と評価」へと展開させています。
● フードチェーンに潜む病原細菌を対象とした研究
我々の研究室では農水省や厚労省関連の研究機関、地方衛生研究所、病院検査室などと連携して、畜産→食品→ヒトへと繋がるフードチェーンをフィールドとした病原細菌の横断的・包括的な調査・研究を行っています。例えば、ヒトに食中毒を引き起こす細菌の多くは家畜や野生動物が保菌しており、原因細菌の家畜における保菌状況や食品への汚染実態がわかれば、感染拡大を防ぐための対策が可能となります。また、これまで感染症の原因としては認識されていなかった感染症原因細菌(新興感染症細菌)の研究にも取り組んでいます。
Key word : 細菌、人獣共通感染症、食の安全、ゲノム解析、食中毒、公衆衛生、腸管出血性大腸菌