講座紹介

宮崎大学医学部総合診療科学講座は、2026年4月に新たに設置された講座です。
総合診療は、患者さんを臓器別・疾患別に分けて捉えるのではなく、年齢や診療領域を限定せず、身体面だけでなく、心理・社会的背景や生活環境も含めて全人的に診る専門領域です。複数の健康問題を抱える患者さんや、診断が確定していない患者さんにも幅広く対応し、それぞれの患者さんにとって必要な医療を考えます。

また、総合診療医がすべての診療を単独で担うのではありません。専門診療科やさまざまな医療・福祉専門職と協働し、診療所、地域病院、大学病院、介護・福祉施設、行政などの施設間連携を進めながら、患者さんが地域で安心して暮らし続けられる医療を支えます。

本講座では、次の領域を柱として、診療・教育・研究・地域連携を一体的に推進します。

  • 総合診療(家庭医療・病院総合診療、地域医療)
  • 地域を基盤とした医学教育
  • 専門職・職種間・施設間連携
  • 宮崎県の地域医療・総合診療体制、総合診療医育成モデルの構築

宮崎県は、人口減少、高齢化、医師不足・偏在など、日本の多くの地域が今後直面する課題を先行して経験しています。本講座は、宮崎県の地域特性と医療ニーズに応じた総合診療のあり方を探究し、大学病院と地域の医療機関、教育機関、行政をつなぐ拠点として、持続可能な地域医療の実現に貢献します。

教授挨拶

2026年4月、宮崎大学医学部総合診療科学講座教授を拝命いたしました。大変光栄に存じますとともに、その責任の重さを深く感じております。

私は熊本大学医学部を卒業後、総合診療医を志し、民間病院グループにおいて総合内科を中心に複数の診療領域、各地の地域医療の現場で幅広い診療経験を積んでまいりました。その間、卒後臨床研修体制の整備や総合診療専門研修プログラムの立ち上げに携わってまいりました。2017年からは熊本大学病院地域医療・総合診療実践学寄附講座で、地域枠学生のキャリア支援、総合診療専門医の育成に取り組んでまいりました。

現在、地域医療は、少子高齢化、人口減少、医師や診療科の偏在、医療資源の地域差など、複雑な課題に直面しています。宮崎県は、こうした日本の将来像を先行して経験している地域でもあります。その中で、患者さんを臓器別・疾患別に分けるのではなく、生活背景や地域とのつながりを含めて全人的に診る総合診療の役割は、ますます重要になっています。

本講座では、卒前教育から総合診療専門研修までを切れ目なくつなぎ、「地域を知り、地域で育ち、地域に定着する」医師の育成に取り組みます。また、大学病院と地域医療機関、専門診療科、多職種、行政をつなぐハブとして、宮崎県の実情に即した総合診療・地域医療モデルの創造を目指します。

宮崎での診療・教育・研究を通して、日本の未来の医療に貢献できる講座となるよう尽力してまいります。今後ともご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2026年4月1日 総合診療科学講座
教授:佐土原 道人

沿革

宮崎大学医学部では、地域医療を担う医師の育成と地域医療の発展を目指し、長年にわたり地域医療教育に取り組んできました。

  1. 2010年(平成22年)

    宮崎県の寄附により、医学部に地域医療学講座を設置。

  2. 2014年(平成26年)

    地域医療・総合診療医学講座へ改称。地域医療教育に加え、総合診療教育・研究を推進。

  3. 2018年(平成30年)

    日本専門医機構による総合診療専門医制度の開始に伴い、総合診療専門医養成を本格化。

  4. 2020年(令和2年)

    都農町寄附講座として地域包括ケア・総合診療医学講座を設置。地域包括ケア、地域基盤型医学教育、長期滞在型臨床実習(LIC)の実践と研究を開始。

  5. 2025年(令和7年)

    地域包括ケア・総合診療医学講座を地域包括ケア学講座へ改称。

  6. 2026年(令和8年)

    地域医療・総合診療医学講座の教育・研究を継承し、宮崎大学医学部の常設講座として総合診療科学講座として新たに発足。旧地域医療・総合資料医学講座の医学部学生の教育は、宮崎県の補助事業として継承。

総合診療医とは

総合診療専門医は、日本専門医機構が認定する19番目の基本領域専門医です。

総合診療は、かつて地域で「何でも相談できる医師」として実践されてきた医療を、現代の医療ニーズに応える専門領域として体系化したものであり、「古くて新しい専門医」ともいわれています。

総合診療医は、年齢や臓器、疾患を限定せず、患者さんを身体面だけでなく、心理・社会的背景や生活環境まで含めて全人的に診療します。また、専門診療科や看護師、薬剤師、リハビリテーション職、介護・福祉職、行政など多様な専門職と協働し、地域全体で患者さんを支える医療を実践します。

総合診療専門医が活躍する場はさまざまです。診療所では家庭医・かかりつけ医として住民の健康を継続的に支え、大学病院や地域の病院では病院総合診療医として診断困難例や複数の疾患を抱える患者さんの診療を担います。また、へき地や医師少数地域では、中小規模の病院であるコミュニティ・ホスピタルにて、地域の医療・福祉・介護などの資源を包括的・一体化して提供し、地域住民の健康を幅広く支える医師として重要な役割を果たしています。

近年、国ではかかりつけ医機能報告制度が開始され、地域で継続的・包括的な医療を提供する体制づくりが進められています。この制度の理念を実践する医師として、総合診療医への期待はますます高まっています。

さらに、大学病院も特定機能病院の要件として、高度専門医療だけでなく、総合診療機能と専門研修プログラム保有が求められております。

本講座では、大学病院を地域医療と専門医療をつなぐハブと位置付け、総合診療研修プログラムの運用を通じて、総合診療専門医の育成と、宮崎県から日本の未来を見据えた総合診療モデルの構築を目指しています。

講座の目的

宮崎大学医学部総合診療科学講座は、総合診療を基盤として、宮崎県の地域医療を担う人材を育成し、持続可能な医療提供体制の構築に貢献することを目的としています。

宮崎県は、人口減少、高齢化、医師や診療科の偏在など、日本が今後さらに直面する医療・社会課題を先行して経験しています。本講座では、宮崎県を日本の未来の医療を考える実践の場と位置付け、患者さんを臓器や疾患だけでなく、心理・社会的背景や生活環境を含めて全人的に診る総合診療を推進します。

教育においては、学生教育から初期臨床研修、総合診療専門研修までを切れ目なくつなぎ、大学病院と地域医療機関が協働する育成体制を構築します。総合診療に必要な診療能力に加え、専門診療科や多職種と協働する力、地域の医療・介護・福祉資源を活用する力を備えた、「地域を知り、地域で育ち、地域に定着する」医師の育成を目指します。

診療・地域連携においては、大学病院、地域病院、診療所、介護・福祉施設、行政をつなぐハブとして、家庭医療、病院総合診療、へき地・地域医療の発展を支えます。また、大学病院における総合診療機能を充実させ、専門医療と地域医療をつなぐ役割を果たします。

研究においては、地域医療の現場から生まれる課題を研究につなげ、実践を通して実証し、得られた知見を診療・教育・地域医療体制へ実装します。宮崎県の実情に即した総合診療医育成モデルと地域医療体制モデルを地域とともに創造し、その成果を全国へ発信することを目指します。