RESEARCH
医療は、予防、病変検出・鑑別診断、治療の順番で進みます。内山研究室では、①個人の健康を見守るAI、②病気を早期検出するAI、③個別化治療を支援するAIを研究開発しています。 内山良一:乳がんのRadiogenomics,Medical Imaging Technology,41(2), 67-72,2023 [PDF] 内山良一:精密医療のためのRadiogenomicsとRadioproteomics,医用画像情報学会雑誌,40(4), 85-87,2023[PDF] 内山良一:乳腺・脳MR画像を用いた個別化医療ナビゲーションシステム,日本放射線技術学会雑誌 78(4) 395-399, 2022[PDF] 内山良一:肺がんのRadiomics研究,医用画像情報学会雑誌, 38(2), 59-60, 2021[PDF] 内山良一:脳疾患におけるRadiogenomics,Medical Imaging Technology,38(1), 15-20, 2020[PDF] 内山良一:脳血管疾患のためのコンピュータ支援診断,総説,医用画像情報学会雑誌,28(2), 23-27, 2014[PDF]
人生100年時代を迎えて長く健康で生きたいと願う人が増える一方で、日本は人口減少に突入し、地域の医療格差が大きくなっています。我々の研究室では、地方に住んでも安心して暮らせるように、個人の健康を見守るAIを開発しています。 個人の遺伝子情報を解析すれば、その人が将来に罹る可能性が高い疾患を予測することができるようになりました。また、パーソナルバイオセンサーを用いて、心拍・血糖値・睡眠のサイクル・栄養などの情報を時系列で取得して個人の行動や運動をモデリングすることも可能になりつつあります。これらの技術を活用すれば、病気になりそうな予兆が見られた場合は、行動経済学のナッジ理論を用いて推奨される食事・必要な運動量などを提案するパーソナルAIアシスタントを開発することができます。 また、軽い心臓発作や軽微な脳卒中などが起きた場合は、その時点の異常データを自動保存して、受診すべき診療科を提案して重篤化を防ぐこともできます。 さらに病院では、メタバース空間のVirtual Hospitalにアクセスし、患者の許可のもとパーソナルAIアシスタントが患者の一生涯の医療記録の中から、診断の参考情報や発作時の異常データのサマリを表示します。 この際、医師はXRデバイスを用いることで、医学知識を持った説明可能なAIと患者の症状について会話もできるようになります。このような近未来の医療AIを開発しています。
病変検出に関するAIの歴史は古いです。1998年に米国のR2テクノロジーというベンチャー企業が初めて商品化に成功してから約25年が経過しました。病変検出に関するAIは、コンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis, CAD)と呼ばれ、これまでに多くの研究論文が発表されています。近年では、人の脳の学習をコンピュータ上でモデル化した深層学習と呼ぶ技術を利用して多くの疾患を検出するCAD-AIが実用化されています。このような病変の検出を支援するAIは過疎地域の診療所で役立ちます。 地方の診療所では、ひとりの医師が自身の専門でない病気も診ています。AIを用いれば様々な疾患の診断をサポートできますから、医師の心強い味方になるはずです。我々の研究室では、過疎地域で様々な疾患の検出を支援するCAD-AIの研究開発を行っています。
中核病院や大学病院で活用するAIも開発しています。がんは日本人の死因のトップです。ゲノム研究の進展によって、がんの成長に関わる遺伝子が特定され、それらの働きを抑制する分子標的薬が開発されています。 遺伝子検査でがんの遺伝型を特定すれば、治療効果の高い分子標的薬を選択することが可能です。しかし、遺伝子検査を行うためにはがん細胞を採取する必要があり、また費用も高額になります。 そこで我々は、非侵襲で安価な画像検査を用いて、病変の遺伝型やタンパク質を推定し、至適治療法を提案する研究を行っています。画像検査で行うことができますので患者への負担が少ないのが特長です。 画像から遺伝型を推定する研究をRadiogenomics、画像からタンパク質を推定する研究をRadioprpteomicsと呼び、個別化治療のためのAIシステムの開発を進めています。