急性膵炎と診断された飼い主様へ

急性膵炎とは

様々な要因によって、膵臓内の消化酵素が活性化されることで、膵臓の自己消化や炎症反応が引き起こされる病気です。原因としては、高脂肪食や誤食(薬物も含む)が多いとされていますが、胆道系疾患や糖尿病、副腎皮質機能亢進症、高脂血症などもリスク要因となります。症状としては、激しい嘔吐、食欲低下、腹痛、下痢などが認められます。さらに、重度の急性膵炎では、活性化した膵酵素や炎症性サイトカインの影響により、DICやショック、急性腎障害など重篤な合併症が引き起こされ、最悪死に至ることもあります。

  • 祈りの姿勢 このポーズは、『祈りの姿勢』と呼ばれ、お腹が痛いときに見られるポーズです。

診断は?

症状や血液検査(膵特異的リパーゼといった特殊検査も含め)、腹部超音波検査などから総合的に診断します。特に超音波検査は重要であり、膵臓実質のエコー源性の変化や腫大、結節性病変、膵管の拡張だけでなく、周囲の脂肪組織の変化が認められることもあります。膵臓における嚢胞もしくは膿瘍病変が疑われた場合は、針吸引、細菌培養検査を実施することもあります。また、上述のように重篤な合併症を引き起こしている可能性も高いため、合わせて全身評価の必要があります。

  • 膵臓腫大
    周囲組織の高エコー化
  • 膵臓領域における
    嚢胞様病変
  • 同病変部から得られた
    血様滲出液(膵液)

治療は?

入院下での輸液、制吐、疼痛管理が必須となります。重篤度や合併症の有無により、輸血や抗生物質の使用なども行います。また、栄養療法も重要で、以前は3日以上の絶水絶食が推奨されていましたが、現在では早期から経腸栄養を実施した方が良いとされています。経口での摂取が困難な場合は、経静脈栄養輸液の実施もしくは、外科的に経腸チューブを設置して流動食の注入を行うこともあります。食事の基本は低脂肪食で、退院後も再発予防のために継続してもらうことがほとんどです。外科的治療は稀ですが、開腹下での腹腔内洗浄やドレナージを実施することもあります。

また、膵炎による閉塞性黄疸を起こした症例では、胆汁外瘻処置を行うことがあります。

宮崎大学農学部獣医学科 動物病院研究室

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