総胆管閉塞と診断された飼い主様へ

総胆管閉塞とは?

胆嚢に蓄えられた胆汁は、総胆管を通って十二指腸に排出されます(図A)。

図A

  • A:正常

胆嚢内に粘液嚢腫や胆石そして胆泥のような内容物が貯留すると、その内容物は胆汁と同様に総胆管を通って十二指腸に排出されます。しかし、総胆管は非常に細い管(通常犬なら3mm以下、猫なら4mm以下)なので、胆石や粘液物質は容易に閉塞を引き起こします(図B)。

図B

  • B:胆石や胆嚢粘液嚢腫による総胆管閉塞

胆管閉塞を引き起こすと、胆汁が肝臓内で逆流し、肝障害を引き起こします(胆汁うっ滞)。

胆汁うっ滞が引き起こされると、肝障害が重篤化し、黄疸が出ます。

更に悪化すると、胆嚢破裂を引き起こし、胆汁が腹腔内に漏れ出て腹膜炎を引き起こします(胆汁性腹膜炎)。

総胆管閉塞は、胆嚢疾患だけで起こるわけではなく、総胆管周囲にある膵臓に炎症や腫瘍が起こっても総胆管を外部から圧迫するので閉塞する場合があります。

図C

  • C:膵炎などによる総胆管閉塞

治療法は?

胆嚢疾患が基礎疾患であれば、胆嚢摘出術を行います。

膵臓疾患やその他の疾患が原因であれば、胆嚢ドレナージや胆嚢十二指腸吻合術を行うことがあります。

治療成績は?

総胆管閉塞は、重症度によって治療成績が大きく異なります。また、施設によっても手術成績に大きな差があります。

胆嚢疾患の病態の流れと病態による手術成績(鳥巣執刀)

A:正常な胆嚢
B:胆泥症
C:粘液嚢腫(閉塞なし)
D:粘液嚢腫(閉塞あり)
E:粘液嚢腫(過去に閉塞あり・今は閉塞なし)
F:粘液嚢腫(閉塞+胆嚢破裂あり)

胆嚢の図の解説

基本的に胆嚢内には胆泥がほとんど貯留していないのが正常な状態です。(図A)

しかし、中高齢になると胆泥が貯留することがあります。(図B)この程度の胆泥であれば、投薬や食事などの内科治療で改善することがあります。

図Cになると、胆泥が胆嚢全体的に占拠します。この時点で、手術を行うと、手術成績は非常に良好ですが、術後に肝障害が出るという副作用があります。詳しくは、担当医にお尋ねください。

図Dになると、総胆管閉塞を引き起こして黄疸が起こっている状態です。この状態で、内科療法を数日行うと、図Eのように、総胆管閉塞していた物質が十二指腸内に抜けるため、黄疸が改善される症例がいます。こうなると、手術適応になります。 一方、図Dの状態で数日の内科治療を行っている場合に、胆嚢破裂を引き起こしてより状態が悪化する場合もあります(図F)。胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎を引き起こしていたら、場合によっては手術しても死亡率が極めて高くなることも論文上では報告されています。

当研究室では、総胆管閉塞の治療成績を向上させるためにあらゆる努力を行っています。治療成績も非常に良好ですが、それでも助けられない症例がいるのも事実です。

宮崎大学農学部獣医学科 動物病院研究室

住所:宮崎県宮崎市学園木花台西1-1